リボンの檻 3 【真名部陣一郎】 (ページ23)

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△リボンが118こ▽ ページ23

「…いつまでも留守番したって意味ありませんよ。
そもそも、アナタは母親の事どう思っているんですか？」

「ママの……事？」

「失礼ですが、アナタの話から推測するに
アナタ暴力を振るわれているんでしょう？
その首の包帯も、頬のガーゼも、全部アナタの母親にやられたんでしょう？」

「……」

「痛い事は好きじゃないでしょう？
これ以上、怒られるのは嫌でしょう？

ここから出れば、ソレから解放されます！
もうアナタは傷付かなくても良いんです。
外に出れば、誰もアナタを傷付けないんです」

「……でも……でも……」

そこで初めて、彼女の瞳が揺らいだ。
真名部から視線をそらして、戸惑いの表情を浮かべる。

やはり彼女も心の何処かで母親から解放されたいとは思っているんだろう。
真名部はこのまま行けば彼女を説得出来るかもしれないと思った。

そうしてこの家から出られるんだと思った。

真名部は言い淀むAの手を握る。

真名部から積極的に触れる事は珍しいので
Aも驚いて再び真名部の方を見遣った。

真名部はその視線を逃がさないよう、じっと見つめると、強く彼女の手を握り締めながら言葉を続けた。

「大丈夫です、僕がついています。
もしもアナタの母親が追って来ていたとしても、警察に頼めばアナタを守ってくれると思います。

ですから………」

「っ…！やだっ！！」

だが言葉の途中でまだしても彼女は拒んだ。
しかも強く、より反発的に。

声を張り上げた渾身の『ヤダ』に真名部は思わず握っていた手の力が緩む。

その隙にAは真名部の手を振り払うと、両腕で膝を抱えて顔を埋めてしまった。

「あ、あの……？」

「やだ」

「そんな、拒まなくても……
そんなに僕って…信用、出来ませんか？」

「ヤダ」

「………」

「ヤだ」

真名部の問い掛けに膝に顔を埋めたまま、ただひたすらに「ヤダ」とだけ答えるA。

まるで駄々をこねる子供のように繰り返しAに
真名部も困り果て、同時に自分は失言をしてしまったのかと考えてしまう。

とにかく、現状は振り出しどころかマイナスだ。
折角彼女に揺らぎが生じていたというのに、何が気に障ったのか。

Aは首を横に動かして膝に頭を擦り付けながら「ヤダ」を繰り返すだけになってしまった。