リボンの檻 3 【真名部陣一郎】 (ページ21)

今日:35 hit、昨日:0 hit、合計:8,797 hit

△リボンが116こ▽ ページ21

「…………え？」

真名部の言葉に、Aの表情が凍りつく。

驚いたのではない。凍りついた(・・・・・)のだ。

泣いていた事も忘れたかのように涙がﾋﾟﾀﾘと止まり
Aは目を見開いて真名部を見遣る。

そんな彼女に気付いていないのか、真名部はそっと視線を落として続けた。

「だって可笑しいじゃないですか。
こんな長い間、アナタを放って家を空けるなんて。
厳しい事を言いますが……きっとアナタ、捨てられたんだと思います。

だから、僕と一緒にこの家を出ましょう。
そうして、もし宜しければ…その、僕の家で一緒に暮らしましょう！
本当はあんな家に帰りたくはありませんけれど…
アナタが一緒なら、少しは楽しくなりそうな気がしますし……へ、部屋だって余ってるんですよ！だから…一緒に過ごせると思うんです。

勿論、ちゃんと僕のパパとママも説得します！
安心して下さい、僕のパパとママは細かい事に厳しい人達ですが、決して暴力に訴えませんから！
だから、まずは一緒に警察に言って、この事を……」

「＿＿＿＿＿＿ヤダ」

真名部は呆然とするAに話しながら、時々頬を赤らめる。

だがその途中で不意に短く言葉が発せられ、今度は真名部が驚いた。

ﾊﾟﾁﾊﾟﾁと目を瞬かせ、彼女を見遣る。
そうして真名部はあからさま悲しそうに肩を落とすと、苦笑いを浮かべた。

「あ………そ、そうですよね……
急に僕の家で暮らそうだなんて……い、嫌……でしたよね……

な、なら…施設はどうでしょう？
親のいない子供が住める施設が僕の家の近くにあるんです。そこなら僕もアナタに会いに行けますし、アナタは路頭に迷わずに……」

「ヤダ」

「………えっ？」

てっきり真名部の家に一緒に住むのを拒絶されたと思っていたがら彼女の反応からそうではないらしい。

Aはふるふると首を横に振ると、また短く拒絶した。

真名部は思わず首を傾げる。

悪い話ではないはずだ。
この家を出れば母親からの暴力に怯える必要は無くなり、平穏に過ごせるはずなのに。

一体、彼女は何をそこまで嫌がっているのだろう？

次に彼女が口を開くまで、真名部には理解出来なかった。

「私がまなべの所に行ったら、お留守番が出来ないから、ヤダ」