リボンの檻 3 【真名部陣一郎】 (ページ3)

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△リボンが98こ▽ ページ3

真名部が事前に注意したおかげか、前回よりははしゃぎ回らなかったが、それでもAは落ち着きなくｷｮﾛｷｮﾛと視線を動かすので、周りから見たらさぞ目立つんだろう。

度々周りから視線を感じ、その度に真名部は彼女に注意する。
しかし彼女はいい返事はするものの、好奇心は抑えられないようだった。

あと何回此処に来れば、普通に歩いてくれるんだろうか……

真名部は内心早々に疲れながらも彼女と一緒に商品を見て回った。

「じんくん！じんくん！次のご飯は何にする？」

「そうですね…おにぎりとかどうですか？」

「おにぎり！あの三角のやつ？」

「はい、そうです。……食べた事、ありますか？」

「んー、ちっちゃい頃に食べた事あるよ！
梅干し入ってるやつとか～、ふりかけかかってるやつとか！」

「(おにぎりは食べた事あるんですね…)」

前回はパンだったので、今回は気分を変えて惣菜のコーナーに入った2人。

並べられたおにぎりを眺めながらふとした疑問を尋ねると、Aは少し考えてからまた無邪気に答えた。

小さい頃…というと、どれくらいの頃だろうか？
本当に小さい頃、それこそ本当に幼児の時だったりするのだろうか。

そのおにぎりを握ったのは誰だろう？
自分で握った？それとも彼女の母親が？

もしかしたらその頃はまだ普通の家庭だったのかもしれない。
彼女の為におにぎりを握ってくれるような、優しい母親がいたのかもしれない。

垣間見えた彼女の過去。
でもまだハッキリした事はわからないし、完全に真名部の憶測だ。

ただ、そんな記憶が彼女に残っていたらいいな、と真名部が密かに思いたいだけだ。

「でもあまり日持ちはしないので、他にも何か買う予定ではありますが……」

「何買うの？パン？それともお菓子？」

「…お菓子はご飯ではありません」

自分の隣でおにぎりを眺めながら子供のように笑うA。

もしも、彼女がよくある一般的な、普通の家庭で育っていたのなら。

一体何処で歯車が狂ってしまったのだろうか。

真名部は考えずにいられなかった。