リボンの檻 3 【真名部陣一郎】 (ページ16)

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△リボンが111こ▽ ページ16

階段を降り、無事デパートを出た2人だったが、真名部の気は休まる事はなく。

あの現場を見られていないか。
もしかしたらもう怪しまれているのではないか。

そんな疑念が真名部の中で絶え間なく湧き続け
終始真名部は周りの視線に怯えながら歩いていた。

AもAでいつもなら一方的に喋り続けているのに、この時は一言も言葉を発さず、ただ微笑みを湛え真名部と繋いだ手を揺らしながら前を向いていた。

そうして、ようやく家に着くと真名部は玄関でｶﾞｸｯと膝をつく。
まるで張り詰めていた糸が切れたようだった。

Aは驚いて真名部を心配したが、真名部は「大丈夫」と言ってそのままﾌﾗﾌﾗと立ち上がると、リビングまで歩く。

リビングに着くと酷い臭いが真名部の鼻を突いたが
今の真名部にはその臭いは寧ろ安心した。

持っていた荷物を落とすようにその場に置くと、真名部はソファの上に座り膝を抱えた。

そうして膝に顔を埋めて、真名部は肩を震わせた。

脳裏に浮かぶのは先程のデパートでの光景。

目の前で警備員が殴られたかと思えば、階段を転がり落ちて、そのまま動かくなった。

Aもいつもは笑っているのに
その時は目を見開き、無表情で。
何を考えているのかわからなくて、真名部は怖かった。

なのに、どうして自分は此処にいるんだろう。

あの光景を見ても尚、自分は彼女の家にいる。

そもそも、どうして帰ろうと思ったのかわからなかった。
あの場から逃げたい気持ちはあったのはわかるが
彼女から逃げたいと思わなかったのは何故なのか。

彼女が警備員を殴った所を見たはずなのに。
それでも平気な顔をした彼女を見たはずなのに。

どうしても真名部は拒絶し切れなかった。
その場で逃げ出そうともせず、それどころか彼女に差し伸べられた手を真名部は握ってしまった。

「(僕は…僕は、何がしたいんでしょう…
人殺しと理解していながら、僕は……)」

自分でも自分の行動が理解出来なかった真名部は
自分で自分が怖くなった。

彼女は間違いなく、最近新聞やニュースでも報道されていた『通り魔殺人事件』の犯人だ。

犯人はまだ捕まっていないと言っていたし
鈍器のようなもので殴られた、とも言っていた。

何より、真名部が誘拐されてからその『通り魔殺人事件』はﾊﾟﾀﾘと起きなくなったそう。

単なる偶然とも思えたが
思考力が著しく低下していたこの時の真名部には
もう、そうとした考えられなかった。