リボンの檻 3 【真名部陣一郎】 (ページ12)

今日:9 hit、昨日:0 hit、合計:8,771 hit

△リボンが107こ▽ ページ12

〝ｺﾞｯ〟

鈍い音が踊り場に響いた。

直後にぐらりと横に傾く警備員。
その下は下り階段。

「ｶﾞｯ……？！」

警備員は短い悲鳴を上げ、階段を転げ落ちる。
途中で骨が折れるような音も聞こえた気がしたが、真名部は聞こえないフリをした。

やがて階段の下に大の字になって倒れる警備員。
その目は虚ろで、口からは血を垂らしていた。

転がった表紙に足が折れたのだろうか。
右足があらぬ方向に曲がり、真名部は思わず口元を手で抑えた。

声も上げられず、ただただ倒れる警備員を上から眺めているだけだったが、警備員の頭から血が流れ出た所で、ふと首を自分の正面に向けた。

先程まで警備員が立っていたそこには、Aが立っていた。

その手にはフライパンが握られていた。

直径20cm程の小さなフライパンだ。
彼女はソレで警備員を横から殴ったのだ。

その証拠に、よく見ると底の部分に薄らと赤い液体が付着していた。

「………ぁ………あ……ぁ……」

「…」

目の前で起きた恐ろしい出来事に、真名部は絞り出すような声を漏らす。

反射的に逃げようとしたが、足がｶﾞﾀｶﾞﾀと震えてしまい、その場で腰を抜かしてへたり込んでしまう。

対してAはじっと下に転がる警備員を見下ろす。

その目はいつしかのようにｶｯと開き
先程までﾆｺﾆｺ笑っていたのに、無表情だった。

「……」

「っ……？！」

不意に、Aが動き出した。
真名部はﾋﾞｸﾘと肩を震わせる。

ﾊﾟｯと顔を上げてAは真名部の手を掴むと
有無も言わさずに引っ張った。

恐怖で震える真名部だったが、その力は想像以上に強く、真名部の足は立ち上がる。
するとAはそのまま階段を駆け足で上り、真名部も手を引っ張られ引き摺られるように彼女の後を追った。

混乱した頭の真名部は急な事にワケがわからなくて。
でもあの場からは立ち去りたい気持ちもあって。

ただ黙って彼女に逆らう事なく、そのまま共に3階分の階段を駆け登った。