世界征服～僕らのサーカス～【イナGO】VS SSC編第肆幕 (ページ30)

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辻 633 ページ30

「トーブ！勝手に先に行くのはダメだよ…！
今回はこの3人で動くって言ったんだし…」

「しっ！静かに！」

不意にトーブの動きが止まり、俺達も足を止めるとAが溜息混じりに文句を呟く。

だがその途中で遮られ、トーブは声を潜める。
そのただならぬ雰囲気に俺とAは顔を見合わせると、口を噤んで周りの状況を確認してみた。

「……？」

「……どうしたの？なんか……いるの？」

……だがパッと見、何かがある様子は無い。

人の気配も感じないし、物音がするって事でもない。

少し離れた所で人の行き交う声は聞こえるが、トーブが警戒するような何かは……

「＿＿＿＿動くな」

不意に、耳元で囁かれた言葉。

低い、聞いた事の無い少年の声だった。

次に感じるのは、冷たく固い感触。

ひたり、と首筋に宛てがわれた〝ソレ〟は鈍く光り
Aとトーブは大きく目を見開いて俺の方を見遣る。

「………っ！？」

声も出なかった。
何せ、本当に突然の出来事だったから。

遅れてようやく、俺は現状に気付く。

自分は今、突如現れた少年に後ろからナイフを首筋に当てられていると。

なんでっ…？！さっき人の気配は全く無かったのにっ…！！この人、一体何処からやって来た！？

まるで煙から出て来たように、今ようやく存在を認識出来たが、こうなる直前までは本当にわからなかった。

この人は……一体……？

「俺だって、本当はこんな事したくない。
でも、見た事ない連中がさっきからこの辺ウロチョロしてるからな。警戒せざるおえなくて。

悪いな、こうしないと生きていけないんだ」

そう言いながら、後ろのヤツはｸﾞｯとナイフを持つ手に力を入れる。

もう《イドラのサーカス》が侵入した事がバレてる……？情報伝達が早過ぎないか？！

Aは後ろのヤツを睨みつけ、トーブも腰を低くして構えた。

「なぁに？強盗さんかな？なら、お望みの物は何？
どうしたら彼を離してくれる？」

「欲しいのは情報。お前達の事だ。
今から言う質問に答えろ。嘘を言ったらコイツの首を掻き切るからな」

「ひっ……！」

それでもAはイドラのような笑みを張り付け、後ろのヤツに問うと、彼は淡々とそう告げるものだから口の隙間から情けない声が漏れる。

手馴れているのだろうか…まるで隙を見せつけない。

これは自力で抜け出すのは不可能。
寧ろ、そんな素振り見せたら本当に首を切られてしまいそうだ。