世界征服～僕らのサーカス～【イナGO】VS SSC編第肆幕 (ページ28)

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辻 631 ページ28

彼は前歯の抜けた口をﾆｯと開いて笑う。

見た目からは特に敵意などは感じない、寧ろ少し変わりはするものの人当たりのいい少年だ。

しかし彼は確かに《イドラのサーカス》にはいなかった。
彼だけではない。菜花黄名子という少女も存在していない。

そう言えば、と思って件の少女の姿を探してみると
彼女は瞬木と組んでいるようだ。

顰めっ面の瞬木の隣でﾆｺﾆｺ笑いながら何やら話している。
ソレをずっと無視し続ける瞬木も瞬木だが
そのまま話す彼女も彼女だ。

あの子もトーブと同じく、敵意などは全く感じない…
しかしフェイも油断するなと言っていたし、警戒はした方がいいのだろう。

というか、あの瞬木相手に話し続ける度胸とメンタルが羨ましい……
俺はあの鷹のような目を見ると思わず竦んでしまうと言うのに。

「あ、あぁ…そうしようか。
よろしくな。えぇっと…トーブ？」

「ついでに、私も入れて貰えないかな？」

少し不安に思いつつも俺は了承すると
直後にAも入って来て、そう言った。

彼女はにこりと微笑みを浮かべて俺を、次にトーブを見遣り、トーブは「ダンチョーも余ったのか？」と首を傾げた。

彼女もいてくれるのは正直助かる。

もしも彼が本当に敵のスパイだとしたら、俺1人で彼を見張れる自信が無かったから。

「いやぁ、フェイか瞬木と組もうとしたけど、2人ともパートナーがいたようだったから。
ま、余りモノ同士仲良くしようよ」

「しょーがないな！ダンチョーもオラの仲間に入れてやる！オメーら、オラの足引っ張るんじゃねーぞ？」

「あー、キミそういう感じかー。
うんうん、なんか新鮮でイイね。嫌いじゃない」

一応《イドラのサーカス》内でのリーダーであるAと組むと言うのに、何処か上から目線なトーブ。

でも何故だか嫌な感じはせず、Aもそういうタイプは珍しいのか面白がっていた。

…まぁ、Aはともかく、俺は本当に彼等の足を引っ張らないように気を付けないと。