◆悪者の悩み ページ17
「Aちゃんは、そうは思ってないよ」
「……」
「Aちゃんはキミの事、そうは思ってないよ」
ヤツの言葉を背中で聞いて、俺は振り返らずに自室へと真っ直ぐ向かった。
……そう思ってはない、か。
そりゃあ、そうだろう。あのお人好しの事だから。
まるで絵本から出て来たかのような善人だから。
例え世界の全てが敵に回ったとしても
アイツだけは俺の味方になるとかほざくんだろう。
メルヘン出身だから。
俺と絡んで来るのだって、俺といたいから、とかじゃない。良心からだ。
なんせ、今の俺はこのチームじゃ邪魔者扱いだ。
雷門中心のオナカマサッカーやってる連中には
俺の存在はいい迷惑だろう。
特に鬼道クンなんか目の敵にしてさ。
そんなんだから、好きで俺に話し掛けて来るヤツなんて誰もいない。
だからなんだよ。絡んで来るのは。
余計なお世話だってのに。
「はーぁ……」
部屋に着いて中に入ると、俺は思わず溜息を吐いた。
……だからって、まともに受け答えする俺も俺だ。
適当にあしらって突っ撥ねればいいものを。
変に構って相手してしまうから、アイツも調子に乗るんだよ。
ああ、そうだな。今度から無視するか。
そうすりゃ流石にアイツも堪えるだろ。
……いや、でも前に部屋の前で話した時、無視しようとしたら勝手に部屋入って来ようとしてたな。
そもそも突っ撥ねてもアイツ、めげずに話し掛けて来てたし……ダメだ。根本的な解決策にはならない。
「……そもそも、あんな奴の事でこんな考えてるだけ時間の無駄ってんだ」
ふと我に返り、俺はまた溜息を吐いてしまう。
最近はどうもあの真っ黒いのの事で頭を回す時間が増えた。何も意味が無いってのに。
考えるのも馬鹿らしくなった俺は頭を抱えると
少し早いが寝る準備を始めた。
「(俺もアイツに構い過ぎだ。もうアイツとは関わらない方がいいのに)」
肩に掛けていたタオルを椅子に掛け、部屋を電気を消してベットに寝転がる。
真っ暗な部屋の中、天井をぼんやり眺めながら、自分に言い聞かせる。
「(俺はアイツを
今更、どの面下げて仲良くしてやればいいんだ)」
今日もその問いに答えが導き出せないまま
俺はゆっくり瞼を閉じた。
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