◇ラプンツェルは相変わらず ページ14
「……1人で何してんだ、ドジっ子ちゃん？」
「すっ、好きで引っ掛かったワケじゃないもんっ…！」
案の定、フドウにはバカにされた。
というか、呆れられちゃった。
思わず反論しちゃったけれど、これ以上言ってもわかってくれなさそうだし、更にバカにされそう。
まぁ……段差に引っ掛かった、って言っても階段でも何でもない、ただの出っ張りみたいな部分で、注意しなくても普通の人は多分ちゃんと乗り越えられると思う。
そんな段差に足を引っ掛けた私は
傍から見たら何も無い所で転びそうになったように見えたのかな。
でもやっぱり『ドジっ子ちゃん』って呼ぶのはやめてほしいかな。
初日に転んだ事思い出しちゃうでしょ。
「ったく…鈍臭いのも相変わらずか」
「フドウの意地悪も相変わらずだよ……」
「あ？なんか言ったか？」
「フーンだ！何も言ってないよーだ！」
「ガキかよ……」
ムカついたからそっぽを向くと、フドウはまた呆れたような顔をする。
やっぱりムカつくけれど、でも同時に満更でもないなって思ってる自分もいて。
……前みたいに、ちょっと話せてるかな。
フドウも観念したのかな。それとも今は機嫌がいいのかな。
とにかく、こうやって話せるのが嬉しい。
こう思ってるのは私だけだろうけど。
「……ふふっ」
「……」
監督の事も忘れて、私はこっそり1人で笑う。
フドウに見られている事に気付かないで。
そんな時、ふとシャワー室の方向から人が歩いて来るのが見え、その人は私に気付くと「やぁ、」と気さくに声を掛けた。
「Aちゃん。
………と、不動くん？」
「あっ、ヒロト…！」
「……」
やって来たのはヒロト。
ヒロトもシャワー浴びた後なのかな？
髪の毛がしっとり濡れていた。
ヒロトは私に、次にフドウに気付いて柔らかな微笑みを浮かべるが、対してフドウは睨むようにヒロトを見てから目をそらす。
フドウったら、愛想も無いのね。
挨拶ぐらいしてあげればいいのに。
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