最後の初キスは終わりの真ん中で【真名部】 ページ12
逃げ惑う人々。
あちこちから聞こえる悲鳴。
窓越しからでもこの静かな部屋ではよく聞こえてしまい、僕は思わず眉を顰めた。
「…ねぇ、陣一郎」
その中でふと愛しい少女、Aの声が響いた。
僕は隣の方を見遣り、首を傾げる。
「あとどれくらいで……
悲しげな瞳で続けて尋ねられて、僕は返答に困ってしまった。
握られた彼女の手は震え、Aはギュッと自分の服の裾を掴む。
「…流石にそれは僕でもわかりかねます」
「だよね。陣一郎でも…わからないよ、ね」
少し考えてそう返答すると、Aは無理矢理作ったような笑みを浮かべて、僕の肩に寄りかかる。
握られていた手は一度離され、そして指を絡め合うようにしてすぐ繋がれた。
「怖いね、陣一郎」
「…そう、ですね」
「うん……怖い」
Aは震える声で話すとまた無理矢理微笑み、ギュッと手を握る。
僕も手を握り返し、空いた手で彼女の頭を撫でた。
「……外、凄いね」
「そうですね…まぁ、当然の事でしょう。
世界が終わると言われたら混乱するに決まっています」
「皆逃げようとしてるけれど…一体何処に逃げようとしているのかな？」
「さぁ……僕にはわかりません」
「今日の陣一郎は冴えないね」
「問題が難し過ぎるんです」
少し意地を張ると、クスッとAは笑った。
その表情を見て自分も少しだけ顔を綻ばせる。
……こうして一緒にいられるのも、もう最後なのでしょうか。
こうして手を繋ぐのも、こうして話をするのも。
もっと彼女とやりたい事は沢山ありました。
一緒に遊園地に行ったりとか、動物園に行ったりとか。
ああ、そう言えば水族館に行きたいってこの間言ってましたっけ。
それに僕達、まだキスした事無いんですよ。
お互い恥ずかしがって、手を繋ぐだけで精一杯で……
「…A」
暫くの沈黙の後、僕は彼女の方に向き直り大好きな彼女の名を口にする。
「…ん」
するとAはまるでわかっていたかのように目を閉じ、微笑みを浮かべる。
僕はその唇にゆっくりと近付くと
そっと、優しく彼女の唇にキスをした。
「……遅いよ、陣一郎」
崩れていく世界の中で、彼女は最後にそう呟いて涙を流した。
人形遊び【南沢】→←隠しててごめんね【キング】＊名無し様リクエスト
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紀鏡 - あれ…好きなもの【風丸】の肉のやつになんか察しがつくぞ…ちょっ？！佐久間？生きてる？！ (2017年7月3日 16時) (
レス) id: 4f8c5bdb75 (このIDを非表示/違反報告)
空月 - 好きなもの【風丸】ってやつの肉ってまさか佐久間の((( (2017年2月6日 14時) (レス) id: 9ea75f5c5e (このIDを非表示/違反報告)
areru - 面白かったです。 またいつかでいいのでijuさんのアフロディ楽しみにしています。 (2016年5月4日 21時) (レス) id: 8f172b8017 (このIDを非表示/違反報告)
リオ(プロフ) - ＊IJu＊さん» わかりましたれありがとうございます♪ (2016年1月24日 17時) (レス) id: 9dca1ab2b7 (このIDを非表示/違反報告)
＊IJu＊(プロフ) - リオさん» リクエストありがとうございます！！ お話がまとまり次第、この短編集の続編に更新しますので少々お待ち下さい！ (2016年1月24日 16時) (レス) id: b02a163c50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：＊IJu＊ | 作成日時：2015年9月10日 13時
