◇ラプンツェルは整理出来ない ページ24
「……大丈夫？A？」
次に私が気付いた時には、グラウンドのベンチだった。タカナシが心配そうな顔をして私の顔を覗き込んでいた。
周りを見るともう既に皆集まっていて、彼等は思い思いにウォーミングアップをしていた。
勿論、練習する為に集まっているんじゃない。
これから試合をする為だ。
その証拠に、向こう側のベンチにはライモンの人達が集まっていて、何やら話していた。
…本当に、試合するんだ。
この日をずっと待ち侘びていたはずなのに、どうしてだろう。
こんなにもガッカリして、夢であれと思うのは。
「顔色悪いんじゃない？さっきもなんかフラフラしてたし…」
「う、ううん…大丈夫だよ、タカナシ。大丈夫…」
咄嗟に私は首を横に振って大丈夫って言ってみるけれど、何も大丈夫じゃなかった。
色んな感情がｺﾞﾁｬｺﾞﾁｬで、整理なんて出来てなかったから。
ふと、サクマとゲンダの方を見てみる。
2人も皆と同じようにウォーミングアップをしていた。
その瞳は静かに醜く燃えていた。
キドウを負かせる為に。ライモンを倒す為に。
私はそっとタカナシの影に隠れる。
勿論、2人は私を見ていなかった。
ただ私があの2人を見ていると、私まで可笑しくなってしまいそうだったから。
「なに、ただ緊張してるだけだろ？
あのライモン様が目の前にいるんだからなァ？」
「…！」
不意に会話に入って来る、意地悪な声。
フドウがﾆﾔﾆﾔと笑いながらそう言って、私を見下ろした。
そうして目を細めると「なぁ？」と私に同意を求める。
口は笑っているのに目は睨むように私を威圧するから、私は思わず頷いてしまうと、途端にタカナシは眉を顰めた。
「…まぁ、ちゃんと試合してくれるならいいケド。
つか不動、あんまこの子に近寄んないで。ハゲが伝染る」
「ハゲが伝染るってなンだよ…？
つーか伝染るならもうとっくに伝染ってるっての」
フドウがこちらに近付いて来た途端、タカナシは私を自分の方に引き寄せてフドウを睨む。
そこからはいつもの2人の会話が始まり
私はそれをぼんやり聞き流しながら、おもむろにライモンのベンチの方を見た。
ライモンのベンチにテレビで見た事ある人もいれば
さっきコンビニで会った人もいるし、全く知らない人もいる。
私達、真・帝国学園よりも人数が随分多くて、しかも可愛いマネージャーが3人もいて、仲が良さそう。
「…」
私はその光景を見てから、そっと視線を地面に落とした。
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