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そもそも、彼女が俺たちのことを髪色で呼ぶのが気に食わない。
一人でいる時は苗字なのに、二人揃うと髪色。いっそのこと名前で呼んでくれたらいいのに。





「おまえら」




そのたったひと言に俺たちは背筋を伸ばす。
治も角名も、もちろん俺も冷や汗が垂れる。






「信介」

「A、こいつらに何もされてへんか」

「大丈夫やで。ていうか、私から話し掛けたら怒らんであげて」

「ならええけど。……他の部活の、ましてやその部長にあんまちょっかいかけなや」

「「ウィッス」」

「信介怖がられすぎちゃう?おもろいわぁ」






何もおもろないと真顔な北さんと、口角が上がっている星奈先輩。


2人は3年間同じクラスらしく、それ故お互い名前呼びなのだとか。
そんな彼らは一時期付き合っている。なんて噂があったが、どちらとも否定し、そのほとぼりはすぐに鎮まった。






「ていうか今日ほんまありがとぉ。半面も貸してもらえて助かったわ」

「いつも応援来てもろてるしな。これぐらい当然や」





朝から外は生憎の雨。

本来チア部は外で練習しているのだが、最近降り続いている雨のせいで外での活動が厳しい。そんな彼女たちを不憫に思ったのか、北さんがコートを半面使うように言ったのだ。
練習規模が狭まるが、星奈先輩を見ることが出来るので正直嬉しい。



北さんが監督に呼ばれたと同時に、星奈先輩は何かを思い出したように自分の通学鞄が置かれた場所へ駆けて行った。
何も分からず、ただその光景を眺めていると、彼女は何かを両手で包んで戻って来た。


「手ぇ出して!」と何故か楽しそうに言う彼女に疑問を抱きながら、俺たちはおずおずと手を差し出す。
すると、小さいものがコロコロと手のひらで転がった。






「塩飴あげる!まだ6月やのに普通に暑いやん?水分だけやなくて、塩分補給もちゃんとするように!」





どうだ、如何にも先輩っぽいだろう!とでも言いたげな彼女に呆然とする俺たち。






「……あ、集合やわ。じゃあ3人とも、部活頑張れ」





去って行く彼女は何処か爽やかで、今が梅雨の時期だということを忘れるほどだった。

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作者名:13.m | 作成日時:2020年5月20日 19時

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