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「俺、法学部の三回生の錦戸。」
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「…私も三回生で経済学部のA。苗字で呼ばれるの好きじゃないんで、下の名前で適当に呼んでください。」
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「…じゃあ俺も亮って呼んで。その方が親しみやすいやろ?あと同じ三回生なんやから、タメ口で。」
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微笑んだ時に見えたえくぼも白い歯も、もじゃって呼んだことをすみませんと謝りたくなるくらい、天使のように見えた。
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「そうだね、亮くんって呼ぶね。」
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もじゃ改め亮くんは、普通の大学生といえば大学生だけど、何処か大人びてるように見えた。その後も六法全書とノートを交互に見ながら手を動かし、私と話を続けた。
その映画の主題歌フラフラがするらしいとか、俺フラフラ好きやねんとか、私もフラフラ好きだよとか、そんなしょうもないと言えばしょうもない話を一時間弱くらいした。
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「ほな、またな。」「うん、またね。」
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別れる側にLINEも交換して、ウキウキ気分で講義室に向かっていていた時、章ちゃんに会った。章ちゃんは怒ったような心配したような顔でこっちに近付いてくる。
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「次の講義間に合わへん言うてたけど、居らんかったやん。今日木曜日やで?木曜日は全部同じ講義取ったの忘れたん?」
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「木曜日な事忘れてて、違う講義室行っちゃった(笑) ごめんね、章ちゃん。」
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「なぁ…A。僕にほんまの事言うてよ…ほんまの事言うたら僕が離れると思っとるん?僕はどんなAやろうと離れへんよ。」
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今度は、章ちゃんから抱き締めてきて、優しさと温もりを感じた、そして心がいっぱいになった…苦しくなるくらいに。
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「…章ちゃん、私何もないよ。本当の事とか、ない。」
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ごめんね、章ちゃん。まだ口は開かせてくれないみたい…。
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作者名:みーとぼーる | 作成日時:2016年10月13日 3時