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「ん…あ、すんません。」
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もじゃの足が私の足に当たり、当たった感触で目覚めたのか謝って来た。
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「いえ、大丈夫です。」
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素っ気ない、そう言われたら確かに素っ気なかった。だけど、他の返しが見つからなかったから仕方ない。あの人から貰ったこの本にも、その時の対処法は載ってない。まあ小説だから載ってないのは当たり前か(笑)
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もじゃは完全に目覚めてしまったようで、ずっとLINEで誰かとやりとりをしてる。私は、この小説のラストスパートに入っている、何度も読んでいるからオチは分かっているけれど何度も読んでしまうのは、あの人から貰った小説のオチがこれなのはどういった意味があるのだろうと考えてしまうからだと思う。
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「その本、今度映画するらしいですよ。横山裕主演で、…あ、大倉忠義も出るらしいです。」
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「…あぁ、そうなんですか。ヒロインは誰なんですか?」
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突然もじゃが話し掛けてきた、驚いたけどもじゃの声が思ったより高くなくてそっちの方に気を取られた。もじゃはさっきまでかけてなかった眼鏡をかけて、六法全書とノートを交互に見てながら私と話をする。器用な人というのはこういう人なんだろうな。
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「冴島 姫子。」
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「…え?あの二人結婚間近と言われてるのに共演するの?」
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「結婚間近もなにも付き合ってへんよ。俺、姫子の知り合いなんで」
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「…あぁ、そうなんですね。」
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もじゃが、こっちを向いた。寝てる時はもっとパーマがかかっているように見えたが、そんなにパーマはかかっていなかった。目が隠れるか隠れないかくらいまである前髪、黒縁眼鏡の奥の目…もじゃに少しだけ惹かれてしまったのはここだけの秘密。
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作者名:みーとぼーる | 作成日時:2016年10月13日 3時