検索窓
今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:1,784 hit

# ページ4

「あ〜なんか、バタバタしてて」

「今に始まったことじゃねーしいいよ。由里、そろそろ帰るか?」

「……もうちょっと居る」


俺のコートをきゅっと握って俯く由里。照はどこまで察してるんだろうか、目を細めて笑うに留めている。


「あんまり玄関先で立ち話してるのも、さぁ」


翔太がもごもごと口を動かして由里を促す。自分たちもそれなりな自覚はあるけれど、他の人たちも由里には甘い。

首を振った由里に対して照は「気持ちはすごい嬉しいけど、明日も学校でしょ?」と柔らかい声で話しかける。

その時に丁寧な手つきで彼女の両手を取るものだから、思わず翔太と顔を見合わせた。

しゃがんでから顔を覗き込んで、さらっと手を伸ばすまでが自然すぎて止める暇もなかった。しまった。照はこういうのがわりと好きなのを忘れていた。


「お返し、楽しみにしててね。いま寂しい分も、楽しいに変わるくらいのあげるから」


まず、辰哉がこれを聞いていなくて良かった、と思った。たぶん変な拗ね方をしてしまう。

次に、1ヶ月後に向けて何をすべきかを考える。寒さではない要因で頬を赤く染める由里。悔しさも吹き飛ぶくらい可愛い。でもそう簡単には心を奪わせない。


「待ってろ、岩本」

「そしたらあの家族全員になるだろ」

「あ、そっか」


これはその日の夜の決起集会での一幕である。参加者は翔太と俺。ひそひそと小声であぁでもないこうでもないと言いながら、来たる3月14日を待つのであった。

#→←#



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (3 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
23人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:べす | 作成日時:2023年2月13日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。