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「あ〜なんか、バタバタしてて」
「今に始まったことじゃねーしいいよ。由里、そろそろ帰るか?」
「……もうちょっと居る」
俺のコートをきゅっと握って俯く由里。照はどこまで察してるんだろうか、目を細めて笑うに留めている。
「あんまり玄関先で立ち話してるのも、さぁ」
翔太がもごもごと口を動かして由里を促す。自分たちもそれなりな自覚はあるけれど、他の人たちも由里には甘い。
首を振った由里に対して照は「気持ちはすごい嬉しいけど、明日も学校でしょ?」と柔らかい声で話しかける。
その時に丁寧な手つきで彼女の両手を取るものだから、思わず翔太と顔を見合わせた。
しゃがんでから顔を覗き込んで、さらっと手を伸ばすまでが自然すぎて止める暇もなかった。しまった。照はこういうのがわりと好きなのを忘れていた。
「お返し、楽しみにしててね。いま寂しい分も、楽しいに変わるくらいのあげるから」
まず、辰哉がこれを聞いていなくて良かった、と思った。たぶん変な拗ね方をしてしまう。
次に、1ヶ月後に向けて何をすべきかを考える。寒さではない要因で頬を赤く染める由里。悔しさも吹き飛ぶくらい可愛い。でもそう簡単には心を奪わせない。
「待ってろ、岩本」
「そしたらあの家族全員になるだろ」
「あ、そっか」
これはその日の夜の決起集会での一幕である。参加者は翔太と俺。ひそひそと小声であぁでもないこうでもないと言いながら、来たる3月14日を待つのであった。
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作者名:べす | 作成日時:2023年2月13日 15時