【つ.わはす】T×A系。【ア.ブ】

45《クリスマスSS》「え、何が？」 ページ46

「え……な、何で？」
がば、と身を起こすと、めまいがした。

「何でって、つわはすくん、メールくれたよね」
困ったように微笑み、差し出されたスマホ画面。
送信時間から見るに、明らかに酒盛りの最中だ。やべぇ、全く覚えてない。

「とりあえず、はい、水」
コップを手渡されて顔が熱くなる。
居酒屋での一件以来、もう迷惑かけたくないって思ってたのに。
又、こんな泥酔状態を見られた。超かっこ悪ぃ……。

「す、すみません」
「謝ることないよ。どうせアブさんに強引に押しきられたんでしょ」

だんだん視界がはっきりしてきた。
酒ばかりだったテーブルの上には、いつのまにか色鮮やかなチキンやサラダなどが乗っていて。
急に空腹を感じた。

「スープなら、飲めそう？」
「あ、はい」
Aさんがよそおってくれたポタージュを一口すくえば、胸の中にも温かさが広がる。うまい。

「Aちゃーん、乾杯しようよー」
「はいはい。あまり飲みすぎないでね」
『禁断の酒』とやらをストレートで飲み交わす二人。
……Aさんの酒の強さ、ひょっとしたらアブさん以上かも。

「あーあ、Aちゃんが来てくれるんだったらミニスカサンタのコスプレ用意したのに〜」
「へぇ、男性用なんて売ってるんですね」
「俺が着るの！？」
それはないわー、と叫びながら抱きつこうとするアブさんの顔にぼふ、とぬいぐるみがめりこむ。

「どうぞアブさん」
「何これ、俺へのプレゼント？」
ゆるい顔のあざらしのぬいぐるみを抱き上げて、わーいと喜ぶ長身イケメン。マグカップの時も思ったけど、意外と可愛いもの好きだよな、アブさんって。

「つわはすくんも、はい」
「え？」
手渡された小さな袋は丁寧にラッピングされていて。開けてみると暖かそうな手袋。

「えっ。あ、俺何も用意してなくてっ」
「いいよ、大したものじゃないし」
いつも手、冷たそうだから、と笑う彼女に胸の奥が締め付けられる。ここで気の利いたプレゼントをさっと渡せたらスマートに決まっただろうに。

「大事にします、ね」
手袋を頬に当ててつぶやくと。

「か、可愛い」
「さすが後輩くん。天然あざといわ……」
「え、何が？」
ほわーっとした笑顔のAさんも、ジト目で頬杖つくアブさんも意味が分からない。

だけどきっと。
こんなクリスマスも、あっていい、と思えてくるから。
不思議だ。


まあ、いつかは。
Aさんと二人で、な……？

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