【つ.わはす】T×A系。【ア.ブ】

17「ばかー！」◆ ページ17

「……いたっ」

ある日。
セピアさんのデスク周りを掃除していると、頭に紙飛行機が飛んできた。

「あ、ごめん、飛びすぎた！」
黒い骸骨Tシャツと、スカルヘアクリップ。
あほ毛の茶髪の青年が慌てたように走ってきて。

「………誰？」
「俺だよ俺ー！」
「あ、何だ。大将か。パンツ一丁じゃないから分からなかった……」
「パンツで認識されてるの俺？」
まあ、12月に突入した今。さすがにパン一は寒いよね。

「あまり事務所を散らかさないでよ。よっと」
紙飛行機を拾い上げる。
あれ。この紙って。

「セピアさんが今日、会合に持っていくって言ってた、契約書じゃない！」
「そうなの？何か封筒ごと廊下に落ちてたんだけど」
「えっ？ちょっと待って、残りは？」
「きのさんの落書き用紙になってる」
「ばかー！」
頬をぽりぽりかく大将に、頭を抱える私。

「どうするん？セピアさん、今日は大事な打ち合わせだって……」
「契約書無いとまずくね？」
騒ぎに気がついたレトさんとキヨくんも駆けつけてくる。

「確か、ファイルが残ってたはずです。印刷して、今から持っていけば、まだ間に合うかも」
冷静にPCに向かったつわはすくんがてきぱきと書類を作成して。

「ありがとう、つわはすくん。じゃあ私、行ってくるね……！」
「あの……俺も一緒に、」
「ううん、一人で大丈夫！」
封筒を抱えて仕事場から飛び出す。
タクシーを拾って、目当てのビルに直行。

「ここ……よね」
受付に場所を聞き。
セピアさんを探してきょろきょろと周囲を見回す。

あ。
いた。

「……Aさん？」
取引先のお偉いさんたちに頭を下げ、一言断ってから私の元へやって来る。

「契約書、会社に残ってましたよ」
「うわっ、本当だ！危ないところだった……ありがとう」
冷や汗を垂らしながら封筒を受けとるセピアさん。

「これはこれは。可愛い秘書だね」
「お恥ずかしながら、彼女の有能さにはいつも助けられてます」
目を細めるお偉いさんたちにセピアさんはにこりと微笑み、私は一歩下がって会釈する。

「いやぁ、こんな若くて美人な子が秘書だったら私なら仕事どころじゃないがね！」
「ああ、うちの秘書と交換してほしいよ」
「ははは、彼女は手厳しいですよ？」
冗談が飛び交うくらい、和やかな雰囲気。
Aちゃんまたねー、と手を振るお偉いさんにお辞儀をして会場を後にする。

良かった。
契約はうまくいきそうだ。

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