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25. あの手この手 ページ25

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銀さんは、ただ黙って私の話を聞いていた。
表情は夜の帳が隠してしまって伺えない。

黙って聞けっていったのに
本当に黙らせてしまうと心がすくむ。

やっぱり、人に話すような内容じゃないよな。

失敗したかな。



「もしお前が
あと少しでも我儘になれたなら、今とは違ったかもな」

「そうかもしれないです。…親殺しって打首でしたっけ。痛そう」

「…けどよ、Aの母ちゃんは
そんな、変に大人なお前だったから
最期に声かけたんじゃねえのか」

「そうだとしたら…大人って、ずるいですね」

「そうだぞ?大人はずりーんだ。

…今だって」



銀さんの手が伸びてくる。

私の髪をそっと耳にかけて
そのまま指が顎にかけての曲線を伝う。

いつの間にか流れていた涙を
そっと彼の手が拭った。


くいっと顎が持ち上げられると
肩を抱き寄せられて銀さんとの距離が縮まる。

深紅を湛えた瞳が私を見つめている。


「泣いてる女を慰める
そんな大義名分を俺は掲げようとしてんだ」






「…びびんねーの」


Aが潤んだ大きな瞳を細めて
静かに俺を見る。
目元で涙が
キラキラと薄く輝いていた。



やがて俺の手に
彼女は自分の手を重ねる。

あの時と違って慌てている様子はない。

憂いと、温もりと、
美しさと、儚さと。

このまま触れていたら消えてしまいそうな
神秘的な表情だった。


「初めて会った時、
私は銀さんのこの手に抱き抱えられて
命を救われました。

あの時の手と、今の手は
変わらぬ優しさを持っています。

…目を閉じれば、ぐっすり眠ってしまいそうなくらい」



「あー、…今のタイミングでソレは駄目だろ」

「つまるところ私も
お母さんの娘として大人になったと言うことです」

「ちっ、ずりぃ女」

「恐れ入ります」

「褒めてねーよ」


肩を抱く手が緩むと、
ぺしこんと銀さんが軽く私の頭をはたいた。


「いたっ」

「さっさと行くぞー。冷えてきやがった」


ぼりぼりと頭をかきながら
銀さんが先へ歩いていく。


屯所までは
まだ後少し歩かなくちゃいけない。






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設定タグ:銀魂 , 沖田総悟 , 恋愛   
作品ジャンル:アニメ
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みけ(プロフ) - 笛さん» 毎度ありがとうございます^^ 沖田くんメインで書いてるので、銀さんには少々我慢して頂いてますw (2021年2月19日 21時) (レス) id: 85e7eab2a4 (このIDを非表示/違反報告)
- 今回の更新最高です!!!銀さんがかわいそうな気がするけどwwww (2021年2月19日 20時) (レス) id: bff55455ee (このIDを非表示/違反報告)
みけ(プロフ) - 笛さん» ありがとうございますっ!お待たせしております。ただいま予定が立て込んでますゆえ、もう少々お待ちください…! (2021年2月10日 18時) (レス) id: 44e1804c7a (このIDを非表示/違反報告)
- 毎日寝る前に更新チェックしてます!!!! (2021年2月10日 1時) (レス) id: bff55455ee (このIDを非表示/違反報告)
みけ(プロフ) - 笛さん» コメントありがとうございます!わたしの文章でそう感じていただけることが幸の極みでございます…!精進いたします! (2021年2月7日 20時) (レス) id: 44e1804c7a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:人魚ちゃん | 作成日時:2019年2月14日 4時

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