【銀魂】江戸に住んでもろくなことない。

23. あの人 ページ23

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「今週のジャンプはもう読んだんじゃなかったんですか？」

「…お前変に鋭いよなぁ。たまに。
苺牛乳の方が良かったかな」

「送ってくれるなら、最初から素直にそう言ってください」


"天邪鬼"と
クスクスAが笑っている。

その表情は月の光に照らされて
とても穏やかだった。



「それはそうと、お礼を言うべきでしょうか。
昼間、わざと話をそらしてくれたでしょう？」

「んん、別に。何があったか知らねーけど
言い辛ェ話振っちまったのは俺だからよ」


あの時。

母ちゃんの話題が出たとき
僅かにAの表情が曇ったのは気づいていた。

誰にでも言いづらいことはある。


…聞きたかった、訳ではない。

聞いたところで、俺がいえることなんざ
大したことでもねえ。


ただ、少し

心配だった。



その後も
会話には入ってくるのに、

気が付いたらAは遠い目をしていた。


その眼差しが、
あの頃の先生と重なったから。

“少しぼーっとしていました”

笑顔の先生の裏にあった孤独
昔の俺は、
そんなこと知ったこっちゃなかった。

けど今の俺は知っている。

そんな目をするやつは
ある日突然消えてしまったりする。



「…私、お母さんのこと
殺しちゃったんです」

「…思ったよりめちゃくちゃ重いんだけど
じゃあ俺こっちだから」

「何を期待してたんですか？残念ながらここからは私のターンです。あの角を曲がらなかったのがとどのつまりですよ」

「いててててて、わかった引っ張るな
何処にそんな怪力秘めてたんだよお前」



ぽつ、ぽつとAが話し始める。

並んで歩く影がゆらゆらと伸びていく。


蟲の声が控えめに響いていた。



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