その79 『まごうことなき』 ページ32
『ゲホｯ…痛…な、 に』
腹部に手を当てると、ぬるりと生温かいものが手につく
自分が先程までいたはずの暗闇から、一人の…
いや、一匹の動物が出てくる
『…黒い…獣？』
それに続いて、人が近づいてきた
口元を手で抑え、咳き込む少年。
何故かは分からないが、何も映していないように思える瞳は太宰さんを連想させた。
「見つけたぞ…鏡花。」
近づいてきた少年は話し始める。
辺りには私の他に人はいない。
ということはこの少年は私に話しかけてきているのだろう。
「ポートマフィアに連れて帰れ、 との命だ。」
『いや、 あの。』
「おとなしくついてくるか、 脚をもいで無理やり連れて行かされるか…
好きな方を選べ」
『いやだから貴方どちら様…？』
誰と勘違いしているのか、一方的に話す少年。
同い年くらいだろうか
しかし、妙に大人びた雰囲気を纏っている
「馬鹿にしているのか」
『…え、 っと』
怪我をしたせいで、うまく呼吸ができない。
「…僕はポートマフィアの駒、 芥川。
まさか人虎の元へ行ってそこまで知能が低下したとは…」
『…あの』
「巫山戯るのも大概にしろ、 お前の力は人を殺 すことでしか価値にならないと教えた筈だ」
『誰、 です…？』
本当に誰と勘違いしているんだこの人。
二人の間に沈黙がはしる
私の身体は限界に向かっているようで、話す気力もなくなってきた。
ひとまず桃色の飴玉を食べて回復したいところだが、未だ緑の飴玉は口の中にあるので新しい飴玉を舐めるわけにもいかなかった。
ん…？
新しい…飴玉…？
『も…しかして』
もしや、と思いなにか反射するものを探そうとした
しかし、相手の方も痺れをきらしたらしく
「羅生門」
そう呟いたと同時に私は拘束されていた
すでに痛かった怪我をした部分を握りしめられ、私の意識はすぐにシャットダウンしそうになる。
乱暴にトラックの荷台へと放り込まれたとき
車のバックミラーに映し出された自分の顔は
『鏡花…ちゃん…？』
まごうことなき
『泉鏡花』
だった。
私を乗せたトラックはそのまま走り出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 820人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
【文スト】 いただきます、したら 『うずまき』 にいました。 さんっ！
転生繰り返してたら、容姿ロリになったババアは、自由気ままに徘徊する件【文豪ス...
【文スト】これはやられた。【太宰治】もっと見る
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蛍原(プロフ) - nimoさん» コメントありがとうございます！ 頑張らせて頂きます！続編でもどうかよろしくお願いします (2018年7月17日 17時) (
レス) id: 5ee87af96c (このIDを非表示/違反報告)
nimo - 最高すぎます！！好みすぎて一気に読んじゃいました！これからどうなっていくのか楽しみです！応援してます (2018年7月10日 20時) (レス) id: 2bb40f5617 (このIDを非表示/違反報告)
蛍原(プロフ) - 翡翠飴玉さん» ふふふ、どうなんでしょうか… (2018年7月1日 16時) (レス) id: 5ee87af96c (このIDを非表示/違反報告)
蛍原(プロフ) - カティさん» ふふ、どうしたんでしょう…リニューアル、と言っても大きく内容が変わるわけではないので、ご安心？下さいませ！！ (2018年7月1日 16時) (レス) id: 5ee87af96c (このIDを非表示/違反報告)
翡翠飴玉 - なるほど、夢主ちゃんの前の人(?)の人格が出てきたのですね？ 判ります判ります。←誰だよ (2018年6月30日 18時) (レス) id: 3e84977007 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蛍原
| 作成日時：2018年3月3日 18時
