8話 ページ8
とっぷりと日が暮れ、目視では道が確認できなくなってきたころ、炭治郎は立ち止まった。
疲れたのかなと思い、じっと行動を見ていると背負っていた籠を地面に下ろし、巻いていた布を取り外す。
「禰豆子、出てきていいぞ」
禰豆子は本当にこんな小さな籠に入っていたのか、炭治郎が嘘をついているとは思っていないが、やはりどう考えてもこの籠に禰豆子は入らない。
じっと籠を見ていると、ひょこりと何かが出てくるのが見えた。
「狭かったろう、もう夜になったから出ても大丈夫だ」
俺はその出てきたものに驚いた。
禰豆子によく似た幼子が中から出てきたのだ。
「ね、禰豆子…?」
思わず名前を呼ぶと、ふわふわとしたどこに焦点が合っているかもわからない目でこちらに顔を向けてくる。
どういうことだ?
禰豆子と同じ柄の着物を着ているように見える…。
それに口には竹が咥えられているようだし、別れた時の彼女と似た状態じゃないか?
女の子が籠から出ようとすると、ことりとそれごと倒れ、もそもそと中から這い出てくる。
そして更に目を疑うことに、彼女は徐々に体が大きくなり、俺の知っている禰豆子そっくりの女の子の姿にまで成長したのだった。
動揺からか声が出ずに、炭治郎の方を見ると
「禰豆子は…鬼になってしまった」
彼は真剣な表情でそう言った。
………は?
え?今”鬼”っていったのか?おにぎりの間違いか?
禰豆子がおにぎりってわけがわからないが、鬼っていうのも理解ができない…だって彼女は人間だろ?
「俺の家族を殺したのは、鬼だ。傷口に鬼の血を浴びると人間は鬼になってしまうんだ」
更に炭治郎は続ける。
「人喰い鬼はそうやって増えていくって…、でも禰豆子は誰も喰ってない!俺の事もしっかり分かってる、その証拠に俺は喰われていない」
てとてと禰豆子は炭治郎に近づき、そんな彼女を彼は優しい手つきで撫でる。
突然の告白に俺はただ茫然とその光景を眺めるのだった。
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作者名:矢月 | 作成日時:2020年2月15日 13時