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41話 ページ41

俺は今正座をして冨岡さんの前に座っていた。

鱗滝さんに言われて、冨岡さんの屋敷に来てから丁度一か月。

俺は鎹鴉を使い鱗滝さんと文通をしているのだが、炭治郎が岩を斬る段階へ入ったことを知らされた。

それを知ってからか、俺の焦りが加速していた。

もしもその岩を斬ってしまったら、炭治郎は最終選別に行ってしまう。

手紙の内容を見る限りでは、まだ岩を斬れていないようだがそれはいつ斬れるようになるかもわからない。

だから俺は冨岡さんに稽古をつけてもらおうと、何度もこうして向かい合って座っているけど、一向に稽古をつけてくれることはなかった。

「どうして稽古をつけてくれないんですか」

「型を教えている、それ以外に教えれるものはない」

日課の瞑想中だった冨岡さんは今も目をつぶり俺の事は見ていない。

そう、俺は伍ノ型までしか取得していない。

だからそれ以降の型を冨岡さんから習っているけど、なにせ冨岡さんは口数が少ない。

庭に設置してある竹で作った練習台を、すっぱりと斬ったと思ったら「やってみろ」とあっさり言ってくる。

物覚えが悪い俺としては、もう少し何か説明が欲しいが、それを言っても無言のままで俺が型を使うのを待っている。

幸いなのは、根気よく何度でも同じことを繰り返してくれるという点だった。

冨岡さんは俺を無下にしているわけではない。

そうは頭で理解しているのに、炭治郎が選別に行ってしまうという不安と焦りで、冨岡さんへのあたりが日に日に強くなる。

「呼吸を乱すな、そう鱗滝さんからも教えられたはずだ」

その言葉に俺は立ち上がった。

そんなの分かってる。

「心を落ち着かせろ」

冨岡さんは目をゆっくりと開き、俺を見据える。

俺は手を強く握った。

誰のせいでこうなっているんだ。鱗滝さんもどうして俺をこの人に預けたんだ。

俺が恨み言の一つでも言おうと口を開こうとした時だった。

けたたましい声が静かな空間に響き渡った。

「伝令!花之森A!南東ノ町ニ鬼有リ!急行セヨ!」

俺は口をキュッと閉じ、体を反転させると屋敷を後にしたのだった。

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作者名:矢月 | 作成日時:2020年2月15日 13時

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