35話 ページ35
その後、俺は誰とも会うことはなかった。
出会うのは
鬼、
鬼、
鬼、
鬼、
貸した面を探したが、見つからず、彼が身を隠していた周辺には、ひどい悪臭が漂っていて、俺はすぐにその場を離れていた。
俺でも感じるほどのにおいだなんて…。
そんなもの先刻まではしていなかったのに。
山を走る気力も限界に近かった。
ただ、動いていないと不安で不安で仕方がない。
やみくもに動けばただ体力を消耗させるだけだというのに、何故かじっとしていられない。
目の前で殺された人、そして水辺に放棄された人、水を欲していた首だけになった人…、それらが俺を
追いかけてくるような気がした。
目を閉じて次に目を開けたら、その人たちが俺を取り囲んでいるような気がして俺は恐ろしかった。
こんなにたくさんの人の死を見たのは約一年と少し前。
これほど人の死が近くにあるものだと感じた事はない。
どうにかなりそうだった。
正気の沙汰ではない。
こんなところに炭治郎が来るのかと考えると体に震えが現れる。
嫌だ、そんなの嫌だ。
鬼共が貪り喰われていた人の顔が炭治郎に見えた事が、裏に焼き付いて離れない。
炭治郎に早く会いたい…
あのお日様みたいな笑顔を見たい。
炭治郎の握った飯が食いたい…
こんなところに居たくない…
俺は考えを振り払うように頭を強く振る。
何も考えるな、今は何も考えてはいけない。
とにかくここを生き残れ。
結局俺は禰豆子を人間に戻す方法を探すことすらできず
最終選別の七日間を生き抜いたのだった。
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作者名:矢月 | 作成日時:2020年2月15日 13時