25話 ページ25
それから半年が経つ。
錆兎とはあれ以来会っていない。
何故怒っていたのか、何故寂しそうだったのか俺にはわからない。
けど、彼に何を言われたとしても俺の気持ちは変わらなかった。
でも、彼が自分の弱さを再認識させてくれたことで、尚更頑張れた。
「全集中常中をようやく覚えたな、よくやった」
鍛錬に行くため、家を出て行こうとすると、鱗滝さんに呼び止められ、今は彼と向き合い座っていた。
いつになく真剣な声だったので、一体何かと構えていると、突然そう言われて、俺は目を丸くした。
俺には煩悩が多く、常に何かを考えてしまう癖がある。
それを払うため、滝行を行い、素振りを行い、座禅も行った。
その他にそれよりも大事な肺を大きくする訓練には、深い川にもぐったり、風呂場で桶に水を張り息を止めたり、夕方から夜にかけて山を走りこんだ。
夜眠る時も、傍らに鱗滝さんが座り、俺が気を緩めると手刀でガンガン叩かれた。
2か月目からは体力がついてきた気がするが、全集中をものにするには半年もかかってしまった。
この修行のおかげかは分からないが、魚は釣るよりも打ち上げた方が早く捕まえれるようにもなった。
だが、素振りはやっていたものの型の技術は一向に上がっていない。
水の呼吸は全拾ノ型があり、俺はそのうち、参ノ型までしか覚えられておらず、これからその鍛錬と、さらなる体力の向上をしなければならない。
「お前に渡したいものがある」
そう言いながら鱗滝さんは立ち上がり外へと出て行こうとするのを俺はついて歩いた。
「もう時期来るはずだが…」
今日はなんとなく天気は良くない、一降りきそうだなと考えていると遠くから誰かがこちらに手を振り走ってくるのが見える。
「鱗滝さーん!」
そう言いながら走ってくる人の顔は赤いようで、
徐々に近づくと、その理由が理解できた。
「どうも!ご無沙汰です鱗滝さん」
ようやく目の前に来た人は、ひょっとこのお面をつけていたのだ。
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作者名:矢月 | 作成日時:2020年2月15日 13時