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3話 ページ3

男性が言った通り、足跡が途切れたところから下るとそこに妹を大事そうに抱きしめる炭治郎がいた、

「二人とも大丈夫か?!」

「…A…」

彼らを見つけて駆け寄る。二人は雪の降る中地面にへたりと座り込んでいた。近づいてしゃがみ込み、二人の顔を交互にのぞき込む。炭治郎は見たところ血が出るよう外傷はないようだったが、問題は禰豆子だった。

口に竹をくわえさせられていて、羽織の隙間から血が滲んでいるのが見える。首筋に手を当てると、脈はしっかりと打たれているが、こんなに出血をしていたらそのうち死んでしまう。

「怪我してるじゃないか!早く医者に…!」

そう言いながら炭治郎に目を向けて、俺は言葉を失った。

ぼろぼろと大粒の涙を流しながら、禰豆子の寝顔をただじっと見つめていて。

こんなにつらそうな彼を見たのは、彼のお父さんが亡くなった時以来だった。

それからは弱音も吐かず、兄弟の世話もしながら、せわしく働いて家族を支えていたのに。

こんなに一生懸命で、クソがつくほど真面目で優しい彼から、大切な家族を奪うだなんて…。

神様、あなたはどうかしています。












炭治郎は禰豆子をおぶり、俺は木に刺さっていた斧を引き抜いて来た道を戻り始めた。

禰豆子の怪我は大したことはないらしい、ちゃんと怪我の具合を見たのかと聞いたら、また泣きそうな顔で大丈夫だという彼に、これ以上聞くことはできなかった。

さっき彼の家で見たのは夢で、全部なかったことになればいいのに。朝早く起きた気になっただけでまだ俺は布団の中にいて、それで彼らもまだ夢を見ている。それがいい、そうじゃなきゃ嫌だ。

呪いのように何度も「これは夢だ」と頭の中で呟くが、それが夢になることはなかった。

たまらず、下を向いて炭治郎の足元だけを見ながら歩く。すると彼は足をぴたりと止めて、こちらに振り返ったようだった。

「A、心配してくれてありがとうな、でももう大丈夫、あとは俺と禰豆子でやるから」

顔を上げると、彼は疲れ切った顔で微笑んでいる。

その顔が俺に大丈夫なように見えると思っているのだろうか。

俺が大丈夫じゃないのに、家族をこんな風にされた炭治郎が大丈夫なわけないだろう。

禰豆子を背負ったまま家の中へと入ろうとする炭治郎の背を、ただ見つめることしかできなかった。

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作者名:矢月 | 作成日時:2020年2月15日 13時

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