思えば知らない ページ10
「そうですか……。
確かに大公夫婦の仲が良かった、とは言えませんわ」
私が知らないだけで、もっと酷いことを言われていただろう。
あの様子じゃ殺されても仕方ない、と零れそうになったが何とか堪えた。
「……でも私はソフィア様が犯人ではないと思います。
あの方はお優しい方ですから」
彼女が昨日見せた大公への殺意と憎しみには心底驚いた。
だがソフィア様は優しく、慈悲深いお方だ。
私は小さい頃からそれを知っている。
あの人が誰かを殺めるなんて、そんなはずない。
ーーでも、そうだとしたら一体誰が大公を？
『なるほど。
では、貴方と大公はどのような関係でしたか？』
「私と大公は……顔見知り、といった所でしょうか」
父と大公夫婦の仲が良いためソフィア様と話す機会は多々あった。
でも大公と話した記憶は数えるほどしかない。
まあ、その話の内容は大体ロクでもないものだったけど。
『分かりました。
最後に眠れない、集中力が欠ける、
食欲がないなどの症状はありませんか？』
「……今の所は、大丈夫ですわ」
『なら良かったです。
お嬢様にトラウマの症状が出てないか、心配でしたので。
何かあれば遠慮なく言ってくださいね』
そう綴って彼はまたにこりと笑った。
「ありがとうございます。
ビクターさんは大丈夫ですか？」
『ご心配いただきありがとうございます。
僕は平気です、慣れていますから』
「そうですか……」
慣れている、という発言に少し胸が痛んだ。
ビクターさんはここに来るまでどんな生活を送っていたのだろうか。
警察官だから仕方ないかもしれない。
だけぢ人の死に際にそう何度も居合わせるなんて、心がすり減っていく一方なのではないか。
ーー私、思えばビクターさんのこと全く知らないわ。
知らないうちに表情が曇っていたのか、ビクターさんが心配そうにこちらを伺っている。
私が不安になっていると思ったのだろうか。
大丈夫、という意を込めて微笑むとビクターさんは一拍置いてからこう言った。
「大丈夫です。
この事件は僕たちが必ず解決しますから」
「……はい」
彼の真剣な眼差しにまたしても私は心射抜かれてしまった。
こんなにもかっこよくて頼もしい男性を今まで見たことあっただろうか？
ああ、私はどうしてビクターさんにこんなにも胸をときめかせているのだろうか。
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れみこ(プロフ) - 怜さん» ありがとうございます！！！うおお嬉しいお言葉……！その代わり中々話が進まないですけどね…←警官ビクターくんは守るべき対象にはきっと紳士的だろうなと夢見ておりますので…！事件解決まで頑張っていきます！ (2020年7月6日 17時) (
レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - れみこさん、新作おめでとうございます！相変わらず描写が丁寧でキャラの心情もスッと入ってくる文章で....。本当に憧れます。序盤なのにビクターくんが格好良くてニヤニヤしてしまいました。今後の展開も楽しみにしています！ (2020年7月6日 15時) (レス) id: 6fe8036f83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れみこ | 作成日時：2020年6月30日 13時
