出会いと王子様 ページ5
駅に到着し車から降りると、外の刺すように冷たい空気が肌にしみるのを感じた。
アレクセイ大公は、どうしてあそこまで性格が悪いのかしら。
ソフィア様はきっと常に我慢しているのだろう。
あのままだといずれ刺されても自業自得だわ。
２人の後ろを俯きながら歩いていく。
すると前から小走りでこちらに向かってくる男性と勢いよくぶつかってしまった。
「きゃっ……！」
顔を上げた時にはもうバランスを崩していて転ぶ、と思った時にはもう遅かった。
やがて来る衝撃に備えて目を閉じた瞬間のこと。
私の体はコンクリートに叩きつけられるのではなく、
誰かの腕に抱きとめられる感触に包まれた。
「……っ！」
ゆっくり目を開けると、クリアになった視界に映ったのはーー
輝くようなプラチナブロンドの髪、やさしい薄桃に色づいた頰。
くすみがかった茶色の大きな目と警官服が特徴の
まるで童話に出てくる王子様のような人だったーー。
凛々しくもまだ幼さの残る、その端正な顔立ちの彼に私は一瞬で心奪われてしまった。
「……ご、ごめんなさい。
私ったらとんだご無礼を……」
その姿に見惚れていると、ふと彼が居心地悪そうに目を泳がせているのに気づいた。
私は慌てて彼から目を逸らし、謝罪する。
すると彼はとんでもない！とでも言うように左右に大きく首を振った。
ーー何かしら、この感じ。
彼を見た瞬間の時間が止まったような感覚。
胸がドキドキして、顔が熱くなるこの感じは。
「あの、名前をお聞きしても……？」
恐る恐る尋ねる。
すると彼はポケットから紙とペンを取り出し、さらさらと文字を綴っていく。
『ビクター・グランツと申します。
こうして会えたのも、きっと何かの縁でしょう。
この度は、よろしくお願いいたします』
彼の手から渡されたメモには、丁寧かつ読みやすい字でこう記されてあった。
そしてビクターさんは軽く頭を下げてから、どこかへ行こうと足を踏み出した。
待って、と声に出すより先に体が動いていたらしい。
私は警官服の裾を掴み、彼を引き止めたのだった。
「また、会えるかしら……？」
ふわふわして回らない頭で、何とか絞り出したこの言葉。
ビクターさんは小さく目を見開いが、すぐにとびきりの笑顔を見せてこくりと頷く。
掴んでいた服の裾を離すと、今度こそ彼は別の場所へ行ってしまった。
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れみこ(プロフ) - 怜さん» ありがとうございます！！！うおお嬉しいお言葉……！その代わり中々話が進まないですけどね…←警官ビクターくんは守るべき対象にはきっと紳士的だろうなと夢見ておりますので…！事件解決まで頑張っていきます！ (2020年7月6日 17時) (
レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - れみこさん、新作おめでとうございます！相変わらず描写が丁寧でキャラの心情もスッと入ってくる文章で....。本当に憧れます。序盤なのにビクターくんが格好良くてニヤニヤしてしまいました。今後の展開も楽しみにしています！ (2020年7月6日 15時) (レス) id: 6fe8036f83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れみこ | 作成日時：2020年6月30日 13時
