夜の訪問者 ページ24
本来なら、五日目の夕方にはスモレンスクに到着する予定だった。
だが思いの外、長い間電車が止まってしまったことによって、
到着は明後日の早朝になってしまうそうだ。
正直、僕たち警官にとってそれはありがたいことだった。
到着が数時間伸びただけでも、抱えるプレッシャーは大分軽くなった気がする。
おまけに到着が遅れることによって、得られるものはもう一つあった。
それはAさんと一緒にいる時間だ。
彼女といる時間は僕にとって癒しでもあった。
まだ彼女と離れたくない。もっと、もっと彼女のことを知りたい。
次話せる機会はあるだろうか。最後にもう一度くらい話がしたい。
いや、出来ることなら何度だってーー。
そのとき、部屋にノックの音が小さく響いた。
確か、今日の見張りは僕じゃなかったはずだが。
僕の部屋を訪れる者なんて車掌か他の警官くらいしかいない。
一体誰が何の用だろうと疑問を抱きながら、そっと扉を開いた。
「……っ！」
扉の先にいる人物を認識した僕は飛び上がりそうなくらい驚いた。
ばくばくと鳴り始める心臓、震えそうになる手。
「こんばんは、ビクターさん。
今、お時間よろしいかしら？」
なんと、僕の部屋を訪れたのはAさんだった。
まさか、こんなにも早くまた話せる機会がやってきたなんて。
思いがけない来訪に僕は動揺を隠せないでいた。
だが喜ぶより先に少し考えなければならない。
まだ二十時過ぎといえど、十分夜と呼べる時間帯だ。
夜に男女が部屋にふたりきりだなんて、大丈夫なのだろうか。
間違いは起こらないだろうが用心することに越したことはない。
でもせっかく彼女がわざわざ部屋まで来てくれたのに、
それだけを理由に追い返すだなんてあんまりではないか。
僅かな時間のなか考えた結果、僕は彼女を部屋に招き入れたのだった。
備え付けの椅子へ彼女を座らせ、座るところの無くなった僕はその横にあるベッドへと腰掛けた。
よくよく見ると彼女はもうお風呂を済ませたのか髪を下ろし、ネグリジェに身を包んでいた。
「突然すみません。
どうしてもビクターさんに会いたくて……」
そう言って、彼女は恥ずかしそうに頰を赤らめて俯いた。
いつもと違う、少し無防備な姿でそんな発言をする彼女は目にも心臓にも悪かった。
駄目だ、これ以上見続けているとまずい気がする。
僕は平常心を保つべく、床に視線を落とした。
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れみこ(プロフ) - 怜さん» ありがとうございます！！！うおお嬉しいお言葉……！その代わり中々話が進まないですけどね…←警官ビクターくんは守るべき対象にはきっと紳士的だろうなと夢見ておりますので…！事件解決まで頑張っていきます！ (2020年7月6日 17時) (
レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - れみこさん、新作おめでとうございます！相変わらず描写が丁寧でキャラの心情もスッと入ってくる文章で....。本当に憧れます。序盤なのにビクターくんが格好良くてニヤニヤしてしまいました。今後の展開も楽しみにしています！ (2020年7月6日 15時) (レス) id: 6fe8036f83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れみこ | 作成日時：2020年6月30日 13時
