問い、ふたたび ページ22
翌日、またしても吹雪の影響でしばらくの間列車が止まってしまった。
この旅もいよいよ四日目を迎える。
もうすぐスモレンスクに、婚約者のいる街へと到着してしまう。
そうしたら、ビクターさんにはもう会えなくなってしまうのかしら。
せっかくあんなにも心惹かれる人と出逢えたのに、たった五日間でお別れだなんて。
そんなの嫌だ。私はずっと彼と一緒にいたいーー。
仕方ないことだけど、一人でいると絶え間なく何かを考えてしまう。
別に悪いことではないがどうも疲れてしまう。このままだと気が滅入ってしまいそう。
紅茶でも飲んで気分を紛らわせようと思い、部屋から出て食堂車へと足を進めた。
ーー
四人がけのテーブル席でどういうわけか私は車掌とふたり、向かい合っていた。
一人で窓の外を見ながら紅茶を飲んでいると、突然車掌の彼が私に声をかけてきたのだ。
同席すること自体は構わなかった。だが車掌は口数の多い人間ではない。
かくいう私も他人と打ち解けることはあまり得意ではないため、会話が全く弾まない。
分からない。私は彼と一体何を話せばよいのかしら……。
「……お嬢様は、今でも大公夫人に罪はないとお考えですか」
ついに車掌が口を開き、気まずい沈黙は終わりを告げたのだった。
「はい。誰が何と言おうと、ソフィア様は無実だと私は信じています」
彼の赤い目が、真っ直ぐに此方を見つめて離さない。
自身に向けられる鋭い視線に負けて、つい目を逸らしてしまいそうだった。
だが、逸らさない。私はじっと彼の目を見つめ続けていた。
「そうですか。
あまり、こういったことは考えたくないのですが……」
一瞬、躊躇したがそれでも車掌は言葉を紡いだのだった。
「ーーお嬢様はあの夜、本当に部屋から出なかったのですか？」
なかなか見つからない犯人、解決しない事件。
もう、ただの公爵令嬢である私を疑わざるを得ない所まで来てしまったのだろうか。
それとも、彼個人的に心当たりでもあるのだろうか。
前者か後者か。
彼はどちらの意図を持って、この問いを投げかけたのか私には分からない。
だが、私の答えはただひとつ。
「……勿論です。
ビクターさんにも言いましたが私はあの夜、
一度たりとも部屋から出ていませんわ」
そう言って、貼り付けたような笑みを車掌の彼に向けた。
「……」
彼は特に何も言うわけでもなく、ただ無表情でじっと私の目を見続けていた。
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れみこ(プロフ) - 怜さん» ありがとうございます！！！うおお嬉しいお言葉……！その代わり中々話が進まないですけどね…←警官ビクターくんは守るべき対象にはきっと紳士的だろうなと夢見ておりますので…！事件解決まで頑張っていきます！ (2020年7月6日 17時) (
レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - れみこさん、新作おめでとうございます！相変わらず描写が丁寧でキャラの心情もスッと入ってくる文章で....。本当に憧れます。序盤なのにビクターくんが格好良くてニヤニヤしてしまいました。今後の展開も楽しみにしています！ (2020年7月6日 15時) (レス) id: 6fe8036f83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れみこ | 作成日時：2020年6月30日 13時
