プロローグ ページ3
ーー生まれたときからずっと、自由なんてなかった。
ロシア有数の貴族ロバート・カヴェーリナ。
彼の娘である私は女で、家を継ぐことこそ出来ないが
公爵令嬢として恥ずかしくないように、
立派な淑女になれるようにと、両親から英才教育を施されていた。
物心ついた時からずっと自由なんてない、狭い部屋のなか、
与えられる膨大なタスクをこなすだけの毎日。
学校、習い事、友人、何一つ自分で選ぶことが出来ない。
親が敷いたレールの上をただ走るだけの、つまらない人生。
何度も逃げ出したいと思ったが、実際行動に移すことはできず、
つい先日20歳を迎えた私に両親は縁談を持ってきたのだった。
相手はスモレンスクの有名な公爵の跡取り息子。
両親から聞いた話によると彼は将来有望、品行方正、
そして気立ての良い人らしい。
それは大変喜ばしい話だが、
私の本音としてはたとえその話が本当でも、
会った事もない相手と結婚するくらいなら
いっそ死んだほうがマシだ。
だけどもし私が自害すれば、家名に傷がついてしまう。
思い出もない、愛情があったかどうかすら分からない、
それでもここまで育ててくれた両親に対して、
そんな真似はできない。
いや、どんな形であれ両親に反抗する勇気が私にはなかったーー。
結局、最後の最後まで両親に何も言えなかった私は
婚約者のいるスモレンスクに向かうため、
父の知り合いのアレクセイ大公、大公夫人のソフィア様と
一緒にペテルブルク駅に向かっていた。
ロシアの首都ペテルブルクからスモレンスクまでは５日間の時間を要する。
当時のロシアはイギリスやフランスなど他のヨーロッパ諸国に比べ、
近代化、工業化においてはるかに遅れを取っていた。
遅れを取り戻そうと足掻いた結果、やっと迎えた産業革命。
急速に進む工業化、近代化のなかつくられた鉄道、
または列車の品質がお世辞にも良いとは言えない。
それに加えてロシアは雪国だ。
吹雪の強さによって列車の速度が左右される、
また止まってしまうこともざらにある。
たかが５日間、されど５日間。
きっと列車に乗るほとんどの人がこの５日間を憂鬱だと感じ、
長い、早く過ぎてくれないかと思うだろう。
だが私にとってこの５日間はきっと人生最後の自由なのだ。
何故なら婚約者と会ってしまえば、もういよいよ逃げられないのだから。
どうか、この５日間の旅が私にとって良いものとなりますようにーー。
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れみこ(プロフ) - 怜さん» ありがとうございます！！！うおお嬉しいお言葉……！その代わり中々話が進まないですけどね…←警官ビクターくんは守るべき対象にはきっと紳士的だろうなと夢見ておりますので…！事件解決まで頑張っていきます！ (2020年7月6日 17時) (
レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - れみこさん、新作おめでとうございます！相変わらず描写が丁寧でキャラの心情もスッと入ってくる文章で....。本当に憧れます。序盤なのにビクターくんが格好良くてニヤニヤしてしまいました。今後の展開も楽しみにしています！ (2020年7月6日 15時) (レス) id: 6fe8036f83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れみこ | 作成日時：2020年6月30日 13時
