交わる視線、重なる手 ページ19
ほんの一瞬、私たちの目は交わった。だが、すぐに逸れてしまう。
恥ずかしいのかビクターさんは即座に私から視線を外し、再び俯いてしまった。
「一目惚れ、というものでしょうか？
頭も心も、貴方のことでいっぱいなんです」
触れていたビクターさんの手はいつのまにか少し汗ばんでいた。
しっとりと潤った手のひらを上に向かせ、そこに自身の手を這わすようにしてなぞらえる。
「……お、お嬢様……っ」
重なり合う手。ビクターさんの手も、私の手も小さく震えていて。
震えを隠すように、止めるようして少しずつ、ねっとりと指を絡ませていく。
「……嫌、ですか？」
「そ、そんなこと……！
う、嬉しいです……とても……」
そう言ってビクターさんは私の手をぎゅっと握り返してくれた。
まるで恋人のような繋ぎ方。
触れ合う箇所は溶けるような熱を持っていて、あつい。
それでも、私はこの手を離したくなかった。
ずっと、ずっとその骨ばった大きな熱い手に包み込まれていたかった。
「……僕も、貴女にこうして触れられると嬉しいです。
ドキドキして恥ずかしいけど、ずっと一緒にいたい……。
これを、人は恋と呼ぶのでしょうか」
その言葉に、自身の胸が大きく跳ねたのを感じた。
触れられると嬉しい、ずっと一緒にいたいだなんて、
私がビクターさんに抱いている感情とまるで変わらないものではないか。
「少なくとも私は、それを恋だと思っていますわ。
ーーねぇビクターさん。私は、自惚れても良いのですか……？」
私の問いにビクターさんはゆっくりと、深く頷いた。
嬉しい、信じられない。
まさか私とビクターさんが同じ気持ちを抱いているだなんて。
自惚れてもいいだなんて。
こんなこと、あってもいいのだろうか。
「……ビ、クターさん？」
空いている方の手を、ビクターさんは私の頰に添えた。
茶色の瞳が、此方へと向けられたことによって再び視線が交わる。
彼の頰はまだ真っ赤に染まったまま。
だけどその表情はさっきとは比べ物にならないくらい凛としていて。
何か覚悟を決めたような、真摯な表情。
ビクターさんは何を言うのだろう、何をするつもりなのだろう。
これからのことを想像し、期待に胸を膨らませているその時、後ろで扉の開く音がした。
「……っ！」
ガタン、という音に反応したビクターさんは一瞬で私から手を離し、椅子から立ち上がった。
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れみこ(プロフ) - 怜さん» ありがとうございます！！！うおお嬉しいお言葉……！その代わり中々話が進まないですけどね…←警官ビクターくんは守るべき対象にはきっと紳士的だろうなと夢見ておりますので…！事件解決まで頑張っていきます！ (2020年7月6日 17時) (
レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - れみこさん、新作おめでとうございます！相変わらず描写が丁寧でキャラの心情もスッと入ってくる文章で....。本当に憧れます。序盤なのにビクターくんが格好良くてニヤニヤしてしまいました。今後の展開も楽しみにしています！ (2020年7月6日 15時) (レス) id: 6fe8036f83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れみこ | 作成日時：2020年6月30日 13時
