告白 ページ18
夜、昨日と同じ車両、そして同じ席へと静かに足を進めていた。
時刻は22時。だが車両の中はもう真っ暗だった。
小さなランタンを片手に歩いていると、遠くに見えるひとつの灯。
「……ビクターさん」
近づき、後ろから声をかけると彼は立ち上がり私を窓際へと座らせた。
「ありがとうございます」とお礼を言うとビクターさんは軽く頭を下げた。
そして私の隣の席に、腰掛ける。
「お手紙、ありがとうございます。
今こうしてまた貴方と話せるなんて、夢のようですわ」
ビクターさんは頬を染め、はにかむように微笑んだ。
口を開き、小さな声でぽつりぽつりと語り始めた。
「……貴女の言葉、とても嬉しかったです。
僕も、貴女を知りたい」
やさしい低音が耳に響いて、心地よい。
だけど胸はときめきと喜びでいっぱいになっていって。
ビクターさんが私の言葉を嬉しいと思ってくれている。
たったそれだけのことで、ちっぽけな私の胸はもう満ち足りてしまっていた。
「だけど、許されることなのでしょうか。
僕のような人間が……」
ビクターさんの発言を止めるように、遮るようにして私はそっと彼の手を握った。
「誰の許しもいりませんわ。
ビクターさん。またひとつ、私のことを知ってくださいな」
手と手が触れた瞬間、ビクターさんは大袈裟なくらい体をびくりと震わせた。
少し赤みがかっていた頰は真紅へと変わっていき、
大きな茶色の目は表面に薄い水の膜を張り巡らせ、ゆらゆらと泳いでいる。
ーー今なら、また心や本音を彼に見せられる気がした。
自分の心を打ち明けるという行為にためらいや緊張といった類のものを感じないわけではない。
ただ、それを覆い隠すような衝動に支配されてしまうだけ。
ビクターさんを前にすると、気持ちと言葉が溢れて止まらないのだ。
「私はきっと、貴方に恋をしています。
ビクターさんの傍にいたくて、触れたくて仕方ないのです」
おそらく、人生で初めての告白。
全て言い切ったあと、湧き上がる羞恥によって自身の頰に一気に熱が集まっていくのを感じる。
真っ直ぐに捉えた視線の先にあるビクターさんの横顔は、これ以上ないほど赤くなっていて。
多分、私と同じくらいの色だろうか。
「でも、僕たちは……会った、ばかりで」
しどろもどろ、泣きそうな弱々しい声でビクターさんはこう言った。
そしてようやく私の顔に目を向けたのだった。
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れみこ(プロフ) - 怜さん» ありがとうございます！！！うおお嬉しいお言葉……！その代わり中々話が進まないですけどね…←警官ビクターくんは守るべき対象にはきっと紳士的だろうなと夢見ておりますので…！事件解決まで頑張っていきます！ (2020年7月6日 17時) (
レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - れみこさん、新作おめでとうございます！相変わらず描写が丁寧でキャラの心情もスッと入ってくる文章で....。本当に憧れます。序盤なのにビクターくんが格好良くてニヤニヤしてしまいました。今後の展開も楽しみにしています！ (2020年7月6日 15時) (レス) id: 6fe8036f83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れみこ | 作成日時：2020年6月30日 13時
