眠れぬ夜に ページ11
ーー２日目の夜、勢いを増す吹雪の影響で列車が止まってしまった。
昼に仮眠をとったせいでなかなか眠れない。
こんな時は温かい紅茶でも飲んでみよう。
ブランケットを羽織ると、私はこっそり部屋を抜け出した。
時計の針は午前二時を指していた。
列車内は暗く、もう皆寝静まっているのか誰の姿も見えない。
そして吹雪によってガタガタと揺れる窓の音だけが響いていた。
小さなランタンを片手に足を進めていると車両の前方、
誰かが椅子に座っている姿が見えた。
こんな時間に誰だろうと警戒しながら近づく。
すると椅子に座っていたのは腕を組み、うつらうつらと舟を漕ぐビクターさんだった。
……もしかして、見張りだろうか？
「ビクターさん……？」
声をかけると、その声に驚いた彼がばっと飛び起きた。
「……っ！ お、お嬢様……！？」
「あ……驚かせてしまってごめんなさい。
どうしてこんな時間に……？」
小さな声で訊ねると、ビクターさんは目を擦って同じように低く抑えた声で言った。
「……見張りです。
お嬢様、こんな時間に出歩くのは危険です。
どうかお部屋にお戻りください」
ランタンに照らされて見える彼の顔は少しやつれていて、
目の下にうっすらとクマが出来ていた。
事情聴取、深夜の見張りなどの警察官としてのタスク。
加えて常に誰かを疑わないといけないこの張り詰めた状況に、彼の体と心は持つのだろうか。
慣れているといえど警察官だって人間だ。
この調子だと近いうちに倒れてしまうのではないか。
そんな不安が頭によぎった。
……私より、ビクターさんの方がよっぽど心配だわ。
こうして会えたのは嬉しいけれど、今は部屋に戻って少しでも休んでほしい。
「私なら大丈夫ですわ。
ビクターさんもあまりご無理なさいませんように。
誰かを守るなら、まずは自分の身を案じてください」
「すみません……」
私の言葉にビクターさんは眉を八の字に下げ、
しゅんとした表情を浮かべてしまう。
違う、そんな表情をさせたかったわけじゃない。
「ああ、そんな顔をなさらないでください。
私はただ貴方が心配で……」
「ありがとうございます。
大丈夫です、分かっていますよ」
「……部屋には、まだ帰れないのですよね。
なら、私と少しお話しませんか？」
急な提案に、ビクターさんの瞳が大きく見開かれた。
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れみこ(プロフ) - 怜さん» ありがとうございます！！！うおお嬉しいお言葉……！その代わり中々話が進まないですけどね…←警官ビクターくんは守るべき対象にはきっと紳士的だろうなと夢見ておりますので…！事件解決まで頑張っていきます！ (2020年7月6日 17時) (
レス) id: f32edadf87 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - れみこさん、新作おめでとうございます！相変わらず描写が丁寧でキャラの心情もスッと入ってくる文章で....。本当に憧れます。序盤なのにビクターくんが格好良くてニヤニヤしてしまいました。今後の展開も楽しみにしています！ (2020年7月6日 15時) (レス) id: 6fe8036f83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れみこ | 作成日時：2020年6月30日 13時
