過去(3) ページ37
事態の重さを知ったマレウスやリリアは、即座にAの魔力を辿って森へと転移する。そしてそこにはすでに大穴の最奥へと向かった妖精達により地上へ運び出され、ぐったりとしたAがいた。
「A！」
二人は駆け寄ると、大きく揺らさないよう細心の注意を払って外傷が無いかを確かめる。マレウスがAの後頭部に手を当てると、ぬるりと赤黒い血が彼の手を覆う。
「いかん、頭を強く打っておるようじゃ。マレウス、揺らさないように止血を。……マレウス？」
「……を、…だ？」
酷く小さな声で俯きがちに呟いたマレウスが顔をゆっくりとあげると、周りに飛んでいた妖精達を睨みつける。
「…Aを、Aをこんな風にしたのは誰だ？今すぐに明日の朝日は拝めないようにしてやろう…！」
凄まじい魔力の高まりを感じたリリアは普段は見せない焦った顔を覗かせて慌てて止めに入る。
「やめるんじゃマレウス！！そんなことをしたところでAは良くならぬ！」
リリアの声で我に返ったマレウスは悔しそうに顔を歪めると、顔色を失いつつある妹の頭を撫でると、外傷を塞ぐための魔法をかけようと注力する。
そうしていると遅れてやってきたセベクやシルバーそして使用人達が、土気色の顔をしたAを目の当たりにして声をあげる。
「……マレウスが傷は塞いだが、頭を強く打っているようじゃ。転移魔法では体に負荷がかかる故、城まで揺らさないよう細心の注意を払うのじゃ。…良いな？」
そんなリリアの命に使用人達は頼もしく頷くと、丁寧かつ迅速にAを運び出した。そして使用人達が去ると、そこに残されたマレウスやリリア、セベク、シルバーは今に沈もうとしてる憎らしいほど美しい夕日の光に目を細めた。
「…落ち着いたかの？」
「…ああ、取り乱してしまってすまない」
「よい。このようなことになるなど、誰も予想もつかなかったことじゃ…誰のせいでも無い。悲しい事故じゃ、マレウス」
そんな二人にかける言葉を見つけられないシルバーとセベクは沈み出した夕日が作り出した伸びる影を見つめるしかなかった。そして、伸びた大小二つの影が動き出すとそれらに従って城へと戻ったのだった。
その日からAは昏昏と眠り続け、しばらく意識が戻ることは無かった。後頭部の傷も治癒した頃、ぼんやりと目を覚ましたAに城中の者が喜んだのであった。
そんな悲しい事故の日からAの世界は、それはそれは美しくて窮屈なのである。
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礼(プロフ) - 無名さん» コメントありがとうございます。自己満足の域を出ない私の文章に対してそんな風に言っていただけて嬉しいです。早いもので続編に行きましたので、今後もお暇な時のお供にしていただけたら幸いです。 (2020年5月23日 15時) (
レス) id: ede101bd3d (このIDを非表示/違反報告)
無名 - 失礼...ごほん...主様語彙力たっかっっっ？！ディアソムニアの小説少ない中でこんな神作あるの幸運過ぎやしませんかァァっっ？！？！幼女ちゃん可愛い！めっちゃ可愛いっっ！読んでてほわほわするし神作って断言できますっっ私が保証しますっっ (2020年5月23日 4時) (レス) id: d92bf3fc5b (このIDを非表示/違反報告)
礼(プロフ) - アリスさん» コメントありがとうございます。ディアソムニア素敵ですよね。カードが未実装キャラもいるので中々小説見かけませんよね（ ; ; ）嬉しいお言葉ありがとうございます。更新頑張りますので今後もよろしくお願いいたします。 (2020年5月20日 21時) (レス) id: ede101bd3d (このIDを非表示/違反報告)
礼(プロフ) - 雪猫と葛さん» コメントありがとうございます！主人公ちゃんのことを愛してくれて嬉しい限りです(^-^)今後も少しずつ更新するので読んでいただけたら嬉しいです。 (2020年5月20日 21時) (レス) id: ede101bd3d (このIDを非表示/違反報告)
アリス - ディアソムニア良い…！！！ディアソムニアってまだ本編更新されてないせいか、小説少ないですよね、、、。この小説あって良かった…！！夢主ちゃん可愛いし…！！更新頑張ってください！！ (2020年5月17日 22時) (レス) id: a926bdc47b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：礼 | 作成日時：2020年4月26日 7時
