弐拾陸の話 ページ26
その次の日、あんまり早く起きれなかった私はエーミールさんに起こされ、仕事に行く彼を見送る為に玄関に行くと、天気は昨日と比べ物にならないくらいカラッと晴れた晴天で、点々とある水たまりが綺麗だ。
ふと思い出して玄関の引き戸の隣を見ると、私が昨日彼に貸した唐傘が立てかけられていた。
『あ、返しに来てくれてる』
「誰かに貸したんですか？」
『前に言った、金髪の人です。昨日、傘も差さずに参拝してたんですよ』
「嗚呼、例の…そんな熱心な参拝客がいるなんて、初めて知りました」
エーミールさんはいつも決まった時間に目を覚まして、私が遅ければ起こしに来てくれる。
それでも気付かないことなんてあるのかな。
『それにしても置いてくだけか…まだ名前も知らないんですよ、何度も会ってるのに』
「恥ずかしがり屋なんじゃないですか？それか……」
エーミールさんはそれか、と言いかけて、少し黙った。
何かを考えている様子で、水たまりを見つめるエーミールさんにあの、と声をかけると、エーミールさんは私を見つめた。
「…妖、ではないですよね」
『妖…なんですかね。正直分かりません。でも、いい人そうでしたよ？なんなら最初私が避けられてたし…』
「そういう手口かもしれへん。まだ確証はないけど…Aさんが妖に分かりやすく狙われていることは私もここしばらくで確信しました。あまり、一人にならない方がいいかもしれませんね」
そういうとエーミールさんは懐に手を突っ込んで、私に手を差し出した。
言われるがまま何かを受け取る為に両手を差し出すと、そこに置かれたのはビー玉…のような何かだった。
『ビー玉…？』
「何の変哲もないビー玉に見えますが、Aさんが大変な時、これを握って念じると貴方を助けてくれます」
『何の変哲もない…ことはないと思いますけど。なんかすごい、濁ってるし』
「それはその…私が下手くそというか、相手が上手というか、なんというか…」
兎に角手作りなもので、とエーミールさんは言葉を付け足した。
手作りと言われれば、この少し不格好な中身にも納得が行く。
『…今度はもう、壊されないようにしないと』
「前の鈴は音が鳴ってAさん本人が気付けるようにしたものですから…今回のはちゃんと助ける為です」
それだけ言い残すと、エーミールさんはでは。と言って境内を後にした。
今日もまた一人の時間が始まる。だけど、彼から貰ったビー玉のおかげで少し温もりがプラスされた気がした。
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にゃーちゃん - めちゃくちゃ好きです…!!マジで尊過ぎる…しかも推しの一人(htrn)出てきたってマジ？神回の予感しかしない…!!!更新頑張って下さい。楽しみにしてます！ (2023年5月3日 0時) (
レス) @page27 id: fd6863f2a6 (このIDを非表示/違反報告)
柚衣 - 続きがとても待ち遠しいです！妖パロめっちゃ好きなので、この作品を見つけることができて、よかったです。更新頑張ってください(^∇^) (2022年4月19日 18時) (レス) @page25 id: a954c39e8d (このIDを非表示/違反報告)
舞太郎 - 珍しい妖パロですねえこういうの雰囲気結構好きですねええ続きが楽しみだわ。神作品だねえ (2021年9月12日 14時) (レス) id: 6f46ea7e84 (このIDを非表示/違反報告)
トシinミルク - 続きが楽しみです！更新頑張ってください！ (2020年4月18日 9時) (レス) id: 4eab459e35 (このIDを非表示/違反報告)
因幡 - 続き待ってます (2020年4月16日 21時) (レス) id: c0af763869 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一条
| 作成日時：2020年4月16日 11時
