弐拾伍の話 ページ25
次の日も、そのまた次の日も、私は早く起きると金髪の彼の姿を見た。
いつも私が話しかける前に走り去ってしまう。
これは分かっててやってるな、ってこの私がわかっちゃうくらいだから、相当嫌われてるんだろう。
私何かやったっけ。
そして一週間ほど経ったある日。
その日は早朝から雨が降っていて、雨の音で普段より早く目が覚めた。
目覚めがいいとは言えないけど、なんだか自然に外に出向く私がいた。
朝の光を浴びるためでもなく、新鮮な空気を吸うためでもなく、やはり気になるのはあの金髪の彼だった。
エーミールさんが私に用意してくれた唐傘を持って、外に出る。
いるかな、と思ってちらりと神社の方を見ると、やはり金髪の彼はそこにいた。必死に何かを祈るように、目を閉じて、口を真一文字に閉じて、下を向いていた。
ただ、彼は傘も何も差しておらず、ずぶ濡れだった。
風邪引いちゃう、そう思った私は咄嗟に『あの！』と声をかけた。
彼は私の言葉に反応を示して、こっちをちらっと見たあと、いつもの逃げる方向を向く。
でもそんなのお構い無しに私は言葉を続けた。
『傘！持ってないんですかー！』
「…」
その人は初めて立ち止まって、もう一度私の方を見る。
何言ってんだこいつ、と少し呆れたような目で。
『今そっち行くので待っててください！』と言うと、彼は観念したのかそこに大人しくとどまった。
近付いて見る彼は、想像していたよりも体格が良かった。マッチョと言われればそこまでじゃないけど、スポーツ選手みたいな筋肉の付き方をしていて、健康的な肌が私と対照的だ。
『これ、私の傘なんですけど、良かったら使ってください』
「え、いや…」
『知ってるかもしれないですけど、私ここに住んでるんで！また晴れの日に返してくれたらいいですから』
「…お、まえ」
『？』
私がほぼ無理矢理彼に傘を持たせると、彼から初めて口を開いた。
開口一番、おまえ。やっぱり私の事嫌いだったかな。そしたらすごいことしちゃったし、怒られるかな。
『あ、あの…』
「……ありがとう」
『！』
「……お前、ほんま変なやつやな」
『え？』
「…いや、こっちの話。また返しに来てもええ？」
『！…はい、勿論！』
彼は軽く笑って、傘を差した。
エーミールさんが私にくれた物だから、彼には小さかったかもしれない。
けど、私も彼も、満足そうな顔をして、お互い顔を見合わせて笑った。
今まで避けられてたのが嘘だったみたいに。
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にゃーちゃん - めちゃくちゃ好きです…!!マジで尊過ぎる…しかも推しの一人(htrn)出てきたってマジ？神回の予感しかしない…!!!更新頑張って下さい。楽しみにしてます！ (2023年5月3日 0時) (
レス) @page27 id: fd6863f2a6 (このIDを非表示/違反報告)
柚衣 - 続きがとても待ち遠しいです！妖パロめっちゃ好きなので、この作品を見つけることができて、よかったです。更新頑張ってください(^∇^) (2022年4月19日 18時) (レス) @page25 id: a954c39e8d (このIDを非表示/違反報告)
舞太郎 - 珍しい妖パロですねえこういうの雰囲気結構好きですねええ続きが楽しみだわ。神作品だねえ (2021年9月12日 14時) (レス) id: 6f46ea7e84 (このIDを非表示/違反報告)
トシinミルク - 続きが楽しみです！更新頑張ってください！ (2020年4月18日 9時) (レス) id: 4eab459e35 (このIDを非表示/違反報告)
因幡 - 続き待ってます (2020年4月16日 21時) (レス) id: c0af763869 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一条
| 作成日時：2020年4月16日 11時
