拾仇の話 ページ19
『安産祈願？』
そう言われて自然に母親のお腹に目がいったが、膨らんだ様子はない。
「私じゃなくて、私の姉の、ですけどね。この神社でお祈りをすると、元気な子が産まれるって、妊婦の間では評判なんです」
あの二人も祈願のお陰ですよ、と母親は優しい顔付きではしゃぎ回る子ども二人を見た。
『エーミールさん、ここにはあんまり人が来ないって言ってましたけど…そうやってお祈りに来てくれる方も居るんですね』
「陰陽師さんの言う通り、確かに少ないですけどね…ところで、貴女は陰陽師さんの許嫁か何かですか？」
首を傾げて私にいう女性に途端に顔が熱くなる。
『いっ、いえ決してそんなものでは！！私はなんですか、その、居候というか、留守番係というか、掃除係というか…』
「うふふ、そんなにへりくだらなくても良いのに。あの陰陽師さん、素敵な方なのに恋人が生まれてこの方出来たことがないって噂でね。気になってたんだけど、貴女みたいな可愛らしい子が居たらそりゃあ他には出来ないわ」
くすくすと笑う女性に、狼狽えるだけの私。
だから本当に違うんですってば…！
*
「じゃあまたね、可愛らしい許嫁さん」
「またなー！」
「また…」
『はい、またいらしてください』
最後まで女性は私を許嫁だと思い込んで帰ってしまった。
誰も居なくなった境内は、確かに寂れているけど、人の足跡や揺れる木々が、少しばかり淋しさを紛らわしてくれる。
私は家に戻り、居間に入ると、立ったまま少し考え事をした。
エーミールさんは、なんで私をこの家に置いてくれてるんだろう。
昨日のエーミールさんの言葉を思い出す。
《すいません、Aさん…私がちゃんと結界を張っていなかったばっかりに…》
《境内の掃除とか私あんまりしないので、してくれて助かってるんですよ》
確かに、昼間仕事に出ているエーミールさんが掃除ができない分、私がするのは彼にとって助かることだろう。
でももし、私が掃除が嫌いで、何もしない人だったら？彼はここから追い出しただろうか。
ショッピが私を管理するとか言い出さずに、私を神社に放っていったらどうなったんだろう。
そもそも、未来から来たなんて変な話を信じてくれたところから、変だったのかもしれない。
掃除した時に開けた障子の隙間から風が吹いてきて、首元の鈴をチリンと鳴らす。
涼しい風とは反対に、私の心にはモヤが広がって行った。
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にゃーちゃん - めちゃくちゃ好きです…!!マジで尊過ぎる…しかも推しの一人(htrn)出てきたってマジ？神回の予感しかしない…!!!更新頑張って下さい。楽しみにしてます！ (2023年5月3日 0時) (
レス) @page27 id: fd6863f2a6 (このIDを非表示/違反報告)
柚衣 - 続きがとても待ち遠しいです！妖パロめっちゃ好きなので、この作品を見つけることができて、よかったです。更新頑張ってください(^∇^) (2022年4月19日 18時) (レス) @page25 id: a954c39e8d (このIDを非表示/違反報告)
舞太郎 - 珍しい妖パロですねえこういうの雰囲気結構好きですねええ続きが楽しみだわ。神作品だねえ (2021年9月12日 14時) (レス) id: 6f46ea7e84 (このIDを非表示/違反報告)
トシinミルク - 続きが楽しみです！更新頑張ってください！ (2020年4月18日 9時) (レス) id: 4eab459e35 (このIDを非表示/違反報告)
因幡 - 続き待ってます (2020年4月16日 21時) (レス) id: c0af763869 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一条
| 作成日時：2020年4月16日 11時
