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12・同情 ページ12






「A、そこら辺でいいのでは……」

『え、舞子にナンパしたのに???』

「ナンパではないんじゃないかなあれ」

『仕方ないなあ〜…。じゃあ私、先帰るから』


ゆっくりと立ち上がり、手をひらひらと振る。ほんっとうに、今度こそ帰ろうと思う。今度のテストに向けて勉強しなくては。舞子と同じ高校に行くためにどれだけ頑張ったことか。


「おい待てよ」

『これ以上あなたに付き合ってられない』

「ウケる、あの踊り子が真面目チャンやってら」

『───舞子は楽しんできな』



心からの笑顔を舞子に向け、片手は灰谷蘭の腕を掴む。
困惑しながらも何かを察した様子の某知育菓子くんが連れてってくれた。君は天才か。ありがと。



「あーあー、いっちゃった」

『私のこと、どこまで知ってんの』

「どこまでだと思う?」



構うだけ時間の無駄な気がしてきた。もういいか、言いたかったことだけ言ってもう帰ろう。


『踊り子時代のことはもう言及しないで』

「対価は?」

『はぁ?』

「頼み事すんならそれくらい普通だろ?」


一理ある。なんならこいつにしてはまともなこと言ってるくらいのノリではあるが。
対価ねえ。なんでもやる、は無しだ。まじで何やらされるかわからない。だとすれば一回で終わりそうなやつだけど…。


「俺のヨメになんねぇ?」

『うっわ…あ、心の声が…。ちなみにそれって女避け要因?修羅場みたいだけ?』

「どっちも♡」

『とんでもねぇクズだな』



いやでもなあ、舞子がこれの弟と付き合ったら確実にこの人ちょっかい出すだろうし、それならもういっそのこと私が近くで止めてればいいのでは??今日みたいに。
わあ私天才〜〜〜。ほぼ脳死である。



『……良いですよ、なりましょう。彼女』



私がそう言うと、意外だ、という顔を返された。
ほんっっとうに、本音を言ってしまえば嫌だ。死んでも嫌だ。だって私そこそこいい高校の優等生(笑)だよ!?これから舞子たちに噂できたらそれをかき消すのも仕事だよ!?
……でも灰谷蘭を野に解き放ってたほうが危ない。絶対危ない。私が。



「じゃ〜これからよろしくな、Aチャ───」

「あぁ〜〜〜っ!!!」


灰谷蘭の声を、女性の声が遮った。大方灰谷蘭が捨てた女の一人だろう。改めてクズだなこいつ。



「もぉ、らぁん!いつでも連絡つけるようにしててっていったじゃん!馬鹿あ!」

「は?お前誰」


女性、同情するよ。

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作者名:yomogi__☆ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/ichigo15ca1/  
作成日時:2022年1月17日 17時

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