〘56〙作戦会議 ページ11
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翌日、私達は母親探しの作戦会議を行っていた。勿論今日の出会い頭に、昨日書き込んだ紙を太宰さんのポケットの中に入れた。もう十数年ほど経っているとはいえ、これでも散々仕込まれた軍人なのだ。元ではあるが。
「じゃあ私がAさんと一緒に行こう♡」
ぴと、と両肩を後ろから掴まれてくっつかれる。ねえ君こういう子だっけ。…そこそこ歳月が経っているから可笑しくはないか。
「あなたに監視が出来るとは到底思えないのですが」
「えぇ〜、少なくとも君よりは上手いことやる自信があるのだけれど」
顔を引き攣らせる優さんとそれを煽るように笑う太宰さん。私と敦君の気持ちはシンクロしているだろう。「早くどうにかして抜け出したい」。だが私と敦君で探しに行くのは優さん的には無しだろう。
『どちらでも構いませんよ、私は。優さんは少しくらい休んだらどうでしょう、とは思いますが』
「いいの!?こんな奴で!?」
『じゃあ決定ですね。私と太宰さん、優さんと敦君。私達は私の記憶を手繰りますか』
「そうだね」
優さんが崩れ落ちる。が、この場を穏便に済ませるためには仕方のないことであった。あのままじゃ結局四人一緒に行動していた未来が見えた。
「A、変なことされたら直ぐに電話してね」
「えぇっ酷ぉい、私そんな事するように見える?」
「日頃の行いのせいでは…」
『ではまた17時にこの宿で落ち合いましょう』
私がカバンを持って立ち上がると同時に、慌てたようにして優さんも立った。
「敦君、くれぐれも気をつけるんだよ」
「あっ、はい…?」
こてん、と続いて立ち上がった敦君が太宰さんが放った言葉に首を傾げた。しかし、太宰さんは直ぐに笑顔に戻って「うーん、何でも無いよ」と笑った。恐らく、例のストーカーのような人のことだろう。遠回し過ぎて何も伝わっていなさそうだが。
「私達は当時のことを知っていそうな人を探してみますね」
『はい。お願いします』
「そういえば、此処の近くには良い清流があるそうじゃないか」
「太宰さんやめてください」
敦君の眼差しが切実だ。今までの言動から察するに、入水からの自死でもしようとしているのか。昨日のセリフを撤回しよう。何なら前よりも前向きに死と向き合っている。前向きに向き合うものではないだろうに。
「Aに迷惑かけないでくださいよ」
「善処するよ」
不安げな眼差しをあとに、私達はそれぞれ分かれたのだった。
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ぺぺいペイペイ - んんん大好きぃ… (9月25日 11時) (レス) @page14 id: 574270cb2a (このIDを非表示/違反報告)
柏よもぎ(プロフ) - ハコ28さん» ありがとうございます!現在誠意製作中ですのでこれからもよろしくおねがいします (2023年4月3日 9時) (レス) id: 3dd860d531 (このIDを非表示/違反報告)
ハコ28 - とっても面白いです。続きを楽しみに待ってます (2023年4月2日 21時) (レス) id: 2c42bd39d0 (このIDを非表示/違反報告)
柏よもぎ(プロフ) - つゆこさん» ありがとうございます〜〜!!!これからも頑張っていきます!!✨ (2023年2月18日 21時) (レス) id: 541650209c (このIDを非表示/違反報告)
つゆこ(プロフ) - 第二幕おめでとうございます!!この小説も大好きです、ずっと待ってました!更新待ってます!((私は福地殿嫌いじゃないですよ!)) (2023年2月18日 9時) (レス) id: 655992e81c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柏よもぎ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/list/ichigo15ca1/
作成日時:2023年1月30日 16時