ghost.37 ページ37
僕は走っていた。
るぅとくんから貰ったメモを握りしめながら。
るぅとくんから聞かされた話が、頭の中でずっとぐるぐるしている。
るぅとくんの口から出てきた言葉は、どれもこれも衝撃的なものばかりで。
僕は、本当に何も知らなかった。
「着いた…」
るぅとくんから貰ったメモに書かれていた場所まで走って、目的の部屋の前まで歩いてきた僕は、息を整えながら壁に張り付いている札を見た。
[302号室 柊 A]
そこに書かれていたのは、確かにAの名前だった。
深呼吸をひとつして、ドアをノックする。
当然だけど返事は無い。
僕は少し遠慮がちにドアを開けた。
部屋は個室になっていて、奥の端っこにベッドが置いてある。
恐る恐る、部屋の奥へと進む。
足が重い。
「A…」
Aが、ベッドに横たわっていた。
透けてない、ちゃんと身体があるAが。
管に繋がれながら眠っている。
その光景を見た瞬間、僕は全身の力が抜けてその場に座り込んでしまった。
震える手を伸ばし、眠るAの手のひらに、自分の手を重ねた。
いつもみたいにすり抜けない。ちゃんと触れる。
「A…、なんで……」
言いたいことはたくさんあったはずなのに。
言葉に詰まってしまい、それ以上何も言えなかった。
.
病院からの帰り道、僕はるぅとくんから聞かされた話を思い出していた。
____「死んでないって、どういうこと…?」
「そのままの意味です。
Aちゃんは生きてるんです」
「え、何言ってんの…?
Aは幽霊だよ…?」
「確かに霊体ですけど、死んではいません。
Aちゃんは今、幽体離脱をしています」
「幽体離脱…?」
「Aちゃんは、意識不明なんです。
事故に遭った日から今までずっと」
「意識…不明…」
「ころちゃんはAちゃんから
"交通事故に遭って亡くなった"
と聞いてるみたいですが、それも嘘です」
「え…?」
「Aちゃんは海難事故に遭って、
なんとか奇跡的に命は助かったけど、
意識がずっと戻っていない状態です。
……表向きでは、"事故"と扱われてますが、
Aちゃんが海で溺れたのは今年の四月。
"四月"に、海で、溺れたんです」
「それってまさか…」
「……ここまで言えばもう分かりますよね。
Aちゃんが溺れたのは事故じゃない。
自分で海に身を投げたんです」
317人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「すとぷり」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ましゅ☆まろ。紫月まろ。(プロフ) - とっても面白かったです!今更ながらですが、完結おめでとうございます! (7月24日 12時) (レス) @page50 id: df7b4f216a (このIDを非表示/違反報告)
葉琥(プロフ) - 完結おめでとうございます。信じてもらえないかもしれませんが自分も一回幽体離脱したことがあって、その時、夢主ちゃんと同じような体験があってこんな偶然あるんだな〜っと思いながら読んでましたw (2020年9月5日 23時) (レス) id: b0d47f7052 (このIDを非表示/違反報告)
なつみ - 完結?おめでとうございます!!さとみくんが出てきた所で一人でずっとつぼってましたwお話面白い部分もあり、切ない部分もあり、すごく面白かったです!ありがとうございました! (2020年3月29日 0時) (レス) id: d37bac9867 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - お疲れ様でした!!すごく面白かったです!! (2020年3月28日 17時) (レス) id: e38bb1f61d (このIDを非表示/違反報告)
詩織-siori‐ - すごくおもしろかったです。意外性のある作品だったので先が読めなくてすごく楽しかったです。 (2020年3月28日 15時) (レス) id: 2a36034942 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時:2020年2月28日 18時