【ONEPIECE】悪運も実力のうち。 (ページ17)

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017 - 船出　※加筆済ページ17

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結局あのまま二度寝してしまい、翌日の朝を迎えた。エースを起こさないようベッドから這い出て、身支度を整える。
袖の膨らんだブラウスの上から、エプロン調のスカートの胴衣をベルトで縛る。小さな花の刺繍はどこぞの伝統だろうか。ともあれ初めて着るタイプの衣装だった。髪を遊ぶ技量がなかったため、リボンは腕に巻いておいた。

乳白色の夜明けが紺色の闇を溶かし始めるような時間帯では、打ち寄せる波の音さえ騒がしく聞こえるほど静まりかえっている。

ストライカーのとなりには、新品とも見劣りしない帆船が並んでいた。釣りをするためだけに使うような簡単なボートとは違い、ひと家族分くらいなら軽く乗せられそうな、上質な代物であることは素人目にもわかった。
順調に行けば半日で海軍基地に着く航路なのだが、あまりにも多すぎる積み荷の量を見るからに、よっぽどエースの脅しが効いていたらしい。

ロープの固定に手こずっていると、後ろから伸びてきた手が代わりにマストに結びつけた。

『あ、おはようございます』

「おう、はよーさん。早起きだなアンタ」

「似合ってる」と褒められて、着こなしが変ではないか逆に不安になってしまった。

「そういやお前、名はなんてんだ？おれはエース！ポートガス・D・エースだ」

問われてやっと自己紹介していなかったことを思い出したが、名前を教えるべきかは考えあぐねた。次に会うときは敵同士である以上、ここでお互いを知りすぎるのはあまり良くない気もする。偽名…はパッと思いつかない。適当につけて後悔しそう。
『ありがとうございます』と言ったきり私が口をつぐんでいれば、「それならそれでいいか」とそれ以上催促されることはなかった。

「でもま、いつかきっとおれに会いに来いよ」

『…それはお姉さんになって、ですか？』

挑発的な声の調子で、エースは人差し指と中指の間にひらひらと紙切れを遊ばせていた。なるほど、彼はお互いの立場をわかってこれを言っているらしい。
ビブルカードを辿って捕まえに来てみろ。その宣戦布告を受け取ってやろうと伸ばした手は、かえって手首を掴んで引き寄せられた。

「期待してる」

エースの顔が離れていくときに私が得たものは、年頃の少女が知るものと同じ胸のときめきだったと思う。浜を離れていく背中を見送りながら、そのわずかな残渣を捜すように、私はそっと自分の額に触れた。

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