ラナンキュラス ▼吉沢亮 (ページ7)

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お酒パワーと昔話ページ7

喫茶店でブレンドコーヒーとチーズケーキを堪能して、ちょっと煙草を蒸して、ちょっとイイ日本酒を買って……オフ前の半日をだいぶ充実させて、暗くなる前に帰ってきたはいいものの。

『何してんの？』

お隣さん、のはずの彼までなぜか私の部屋にいる。

「ダメ？」

『ベッドは自分で出してね』

「はーい」

デジャヴ感に襲われる私をよそに、慣れた手つきでエアベッドを完成させて、なんでかお風呂まで洗っている始末。

『飯作れってか。よくできた男だな……』

「でしょ？Aにだけだよ」

『本当にイイ男だよ、顔も調子も』

「Aは照れ隠しの時に皮肉言うって阿比ちゃん言ってたよ」

いつの間にかすぐ側にいた亮。料理は放置の段階なので、冷やしておいた缶ビールを空ける。小気味いい音がふたつ、そのあとで静かに缶を突き合わせる。

『「おつかれさま」』

「阿比ちゃんほんとぱりペディアだよね。なんでも教えてくれる」

『そんなに？例えば？』

「コンビニでバイトしてた話とか、元カレの話とか」

『だいぶペラってた！あいつ本当にマネージャーか？』

「あとさ…家族の話も聞いた」

『ハア！？阿比ちゃんプライバシー概念とち狂ったか？』

亮が少し躊躇して言い出した、家族の話とかいうそれ。決して人に気軽には話せない、それどころか私も記憶が曖昧で、もう時効もとっくに過ぎたくらいには昔の、生い立ち話。

「お亮だから言うんだけどね～？って言われた。助けてあげてねとか」

『あ～そういうこと…ま、私は大丈夫だよ。まず覚えてない』

「本当に？」

心配するように私の顔を覗き込む亮。そんなに身長差がない分、距離が近い。

『今はほんと。でもダメになったら助けてくれる？』

「ダメになる前に気付いてあげる」

満足そうな顔をして、恐ろしいくらいにイケメンなことを言ってのけた。まだ缶ビール一杯しか飲んでない、素面も同然なのに。

なんだか手持ち無沙汰になって、しっかり染みた大根を鍋からすくって、目の前のイケメンに味見させた。

「ん、あふい、けど、うま～」

『よし、食べて飲んでたっぷり寝よ～！』