No.11 ページ12
「ねぇ、大丈夫…?」
ハッと、扉に目をやる。
鈴音だ。
この状況を見られたら、今でさえ距離が出来てしまったこの関係が終わる気がして、
『ゲホッ…だいじょ、ぶだから、』
「…開けるよ。」
からからと扉が開かれて、鈴音が息を飲むのが分かった。
…終わった。
多分、これから鈴音は俺に化け物、と叫んで、俺の前から消えるんだろうな。
また、一人か。
吐きすぎて酸欠になってきた頭でぼんやり思う。
「ごめん、触るね。」
いつの間にか俺のすぐそばに屈んで、俺を覗き込むようにしていた鈴音は、言い終わるやいなや俺の口元に垂れたインクを指で拭いはじめた。
『や、めろ。きたな、い。』
必死で鈴音の腕を振り払おうとするけど、力の抜けた身体では細い腕すら払えなかった。
「汚くない。」
まっすぐな声でそう言われ、抵抗をやめる。
不思議と鈴音に触られてから吐き気は止んで、口からインクも流れなくなった。
多分、吐いたことによる生理的な涙で、俺の目は潤んでいるんだと思う。
目の前にいる鈴音が、ゆがんで見えたから。
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林檎 - コメント失礼します。珍しい様な内容だったので凄く新鮮で好きになりました!これからも頑張ってください!応援してます! (2月9日 21時) (レス) id: b7103bc41b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ichi x他1人 | 作成日時:2022年8月3日 16時