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｢その辺りで大丈夫です｣
タクシーを降りてマンションへのエントランスを抜けてエレベーターに乗り込む。
無言のまま回数表示を眺めていた。
｢全然しゃべんないね｣
｢緊張してます･･･｣
｢そりゃそうだよねー｣
静かなエレベーターの中で声がより響いて聞こえた。
ゆっくりと上昇の速度が緩み５階で止まり、再び手を取って歩き始める。
｢どうぞ｣
｢おじゃまします｣
促されて部屋に入ると、香水のような香りが鼻に入る。
室内は服が所々散乱している以外は綺麗にされていた。
靴を揃えて足を踏み入れる。
｢ごめんね、散らかってるけど｣
｢いえ｣
乱雑に置かれた服を避けて、ソファーに座り辺りを見渡した。
服に楽器用品、美容グッズなど様々なものが目に入る
｢あんまり見ないでくれる？一応俺も恥ずかしい｣
｢ごめんなさい、ついつい｣
エアコンを付けてメイが隣に座り煙草に火をつけた。
部屋の香りに酔いそうになりながら独特な居空間のような錯覚に陥ってしまう。
｢ところで名前は？｣
｢Aです｣
｢A。よし、覚えた｣
私の手をいじりながら、また顔をみつめられる。
この視線に滅法弱い
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作者名：emilia | 作成日時：2017年9月19日 18時
