王子はいかが？ (ページ22)

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部屋に着くと暖かさが体を包み込む。
先ほど自分が一樹の事を好きだと気付いたせいで意識してしまい、まともに目すら合わせられない。

｢まだ不安？｣
｢いや、そうじゃないの｣

その様子を見て私がまだ気にしているのではと思われてしまっているようだ。
すかさずそうではないと伝えるも一樹の顔から不安は抜けていない。

｢私、多分好きなのかもしれない｣
｢え？｣
｢それに気付いたら見れなくなっちゃったっていうか…｣
｢待って、俺の事をだよね？｣
｢他に誰が居るの？｣

その瞬間一樹の顔が一気に明るくなり力いっぱい抱きしめられた。
私も一樹の肩に顔を乗せて微笑む。

｢ちゃんと俺の名前呼んでよ｣
｢いきなり何？｣
｢名前呼んでくれなきゃ誰の事好きか分かんなかった｣
｢今は分かってるからいいでしょ｣
｢呼んで？｣

改めて呼んでと言われると呼びにくいにも程がある。
誤魔化そうにも一樹は意外と頑固だから納得するまで、ずっと言い続けそうだ…
小さく深呼吸をして口を開く

｢……一樹｣

聞き取れるか聞き取れないかの小さな声だったが今の私にはこれが限界だった。

｢やっと呼んでくれた｣

抱きしめていた体が離されると額にそっと唇が落とされた。
一樹の行動は本当に読めない
顔を真っ赤にさせる事しか出来なかった。