青天の霹靂【日々樹渉】 (ページ8)

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爽秋の候ページ8

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暦の上では秋なんだとよ。

日々樹渉は不思議な奴だ。彼は毎月日にちは不定期なのだが私の前に現れる。必ず1日だけ。

自室の布団で丸くなって寝ていれば日々樹渉が私の頬をつついていた。夏休みだと浮かれて、近所に住む旧友とお祭りに出かけ祭りの屋台を巡り巡ったせいか、丸くなってしまった私の頬。

「丸くなりましたね」

そう小馬鹿にするように笑う彼に、余計なお世話だと溜息をつく。寝起きで化粧もしていないこの顔を、アイドルの卵に笑われているという現状が非現実的だ。私はそんな非現実的を彼と過ごしている。

「今日は何処に行きましょうか」

「あと4時間寝させてください」

捲られた薄い布団で顔を覆い丸まって瞼を閉じる。
天井の電球も彼の綺麗な顔も見えないが、日々樹渉がそこにいるというだけで胸が苦しくなった。

「もう午後4時ですよ」

「は、」

「まあ冗談ですけど」

彼の突拍子な冗談にまんまと騙された私は、布団から出るはめになる。枕元に置かれた古臭い目覚まし時計は午前10時。昨晩没になった原稿を丸めた努力のゴミが私を囲んでいる。

今思えば不幸の予兆なんて起こっているじゃないか。こんな身の余る甘ったれた経験をしている私。

この日から五日後、私の口から言葉が。喉から声が、出なくなってしまった。