青天の霹靂【日々樹渉】 (ページ6)

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盛夏の候ページ6

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短冊に彼は不謹慎な一文を添えた。

「日々樹渉は何者だ、なんて思いましたでしょう」

「読心術やめてください」

七夕祭りが迫るこの頃、私は何故かまた日々樹渉とこうして二人きりで出掛けていた。大型ショッピングモールの1階中央に飾られた大きな竹。側には机の上にサインペンと色とりどりの短冊が置かれている。

彼は鼻歌でも歌いそうな足取りで駆け寄り、青色を選んでペンを走らせた。その一連の流れが、とても早くてよほどの願い事なのだろうと思いきや、高い身長を活かし高い位置に飾ったのだが内容は目を見張る。

Aさんが死にませんように

そして冒頭に至るのだが、日々樹渉は何者だ。

他の短冊に目をやれば老若男女の文字が広がっていた。プリ〇ュアになれますように、天祥院英智と結婚できますように、ずっと〇〇くんと楽しく生きれますように、サッカー選手になりたい！

そんな中で日々樹渉の短冊は浮いていた。

「じゃあ私も、って色全然無いじゃん」

こういう時あるあるの茶色と白と黒しか余らないってやつ。日々樹渉はケラケラかわいた様に笑った。
でも私には好都合だった。選ばない方がいいであろう黒を選び、黒のサインペンを手にする。

日々樹渉に、見られたくなかったのだ。誰にも見られたくなかった。勿論、自分自身も気恥しい。黒に黒は思い描いたように馴染んで自分でも読むことは出来なかった。綺麗な字を意識して書いたのだが見えてないので意味はなかった。

「蒸し暑いですね」

彼はそう言って頬に手を置いて、片手で首元を仰いぐ。店内は馬鹿みたいにクーラーが効いていて涼しいどころか寒いのだけれど、彼が本当に暑そうに頬をほんのり赤く染めていたからそうですねと自然と口から漏れた。

ポニーテールに結った綺麗な髪の毛は私よりずっと長い。私の髪は結局、彼に似せた＿＿＿のは少し照れくさいので少し濁った銀色にした。青から銀になった私の頭は、見た目だけでなく心も少し変わった気がする。

この銀色は、なんだか刃物を思わせて落ち着かない

風が吹いた時、顔の正面を覆うように髪の毛が吹かれてしまう。しかしその銀色がちらつく視界で、少し先を歩く日々樹渉のうしろ姿を見るのがとても好きであった。

綺麗、と単純に思う。
夏らしく青色に染まった空と真っ白な大きな雲。
そこに彼は存在していて、時々立ち止まって振り返るのだ。

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