今日こそはヌナを振り向かせます。

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『ねえ、美味しくない？』





急に降りてきた言葉に、ハッとする。



さっきから無言で箸を進めていたことに気づく。





「美味しいよ、ヌナ。」




またいろんなことを考えて、どこかに旅立っていた自身を呼び戻す。





ヌナは、眉間にちょこっと皺を寄せて。





『ぐう、最近どうしたの？』





「どうしたのって…なんで？」





『全然、遊びに来ないし。誘っても来ないときあるし…』






箸を止めることはないけど、俯いて少し不機嫌そうにする。






「あー、と。バイト、たくさん入れちゃっててさ…」





ヌナと2人になるのを恐れてる、

なんてもちろん言えるわけもなく、

適当な言い訳が口をついた。








『ふーん…。』





「……………。」





沈黙。





2人の僅かな咀嚼音だけが、部屋に響く。





ねえ、ヌナ。




それどういう意味？





どうゆう感情でその可愛い拗ね顔なの？









「ヌナ、『あ、』





遮られる僕の言葉。






パッと顔を上げたヌナの声に、

一旦口を噤んで耳を傾ける。









『彼女ができた？あれ本当なの？』








え。






衝撃。







本当なの？って。






「どういうこと？」









『サークルの一年生の子が、たまたまぐうの話してるの聞いたの。彼女がいるから、って告白断られた子がいるって。』









…参った。



自分のための都合のいい嘘が、ヌナの耳にまで入るなんて。




想定外すぎる。





「…いないよ、彼女なんて。」







じゃあ、ただの噂かあ。と、

納得したのかしてないのか微妙な言い方をしたヌナの顔は、

どこか安心したような顔にも見えて。









「ヌナ、僕に彼女がいたらイヤなの？」







ほんの少しの期待を込めて、言ってみる。





内心の緊張を、悟られないように。




平然を装って。







返ってきた答えは、







『そりゃあ。ぐうに彼女ができたら、こんな風にご飯食べることもできないかもしれないし…。せっかくまたお隣になれたのに。』








僕の期待してたものとは、やっぱり少し違った。







うん、わかってたけど。

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