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多分私から言わないと、

錦戸くんは、私に罪悪感を抱いたまま。

そして器用だけど不器用な彼は、大倉のように“普通”にできない。

きっと腫れ物に触る様にその話題を避けて。

・・・そんなのまっぴらだ。

“一人暮らしなの?可哀そう。”

聞かれたから答えただけなのに、

どいつもこいつもそういうレッテルを貼って。

誰が可哀そうだ。可哀そうかどうか、決めるのは私。

上辺だけの同情なんて、いらない。




・・・案外、私も馬鹿なのか。




「うちの親は、昔から喧嘩ばっかしてた。」


話し出した私を、驚いたような目で錦戸くんは見た。

構わず続けた。


「結局小5の時に離婚して、私は母親の方に引き取られた。」


そこからはありがちな展開。

夫と別れ、一人になった母親。

自分の羽を縛り付けていた鎖が無くなった蝶は、夜の世界に羽ばたいていき、

そして自由に、舞う。


段々と家に帰ってこなくなって、

私は、一人の夜を過ごす事が増えた。

そして高校入学前、ついにこう言われた。


“・・・生活費は十分振り込むから。”

だから出ていくと。

薄々勘付いていたし、別にショックではなかった。

引き止めるつもりもなかった。


だけど、心底がっかりした。


お金は振り込むから、いいよね。

母親が言っている言葉はそういう事で。

そんなのが、免罪符になると思っているのだろうか。

違う。違う。

私が欲しかったのはお金じゃない。

お金じゃ、手に入らないようなもの。

お金で許せと言っている母親が、哀れだった。

この(ひと)も、馬鹿だった。


新しい男は、どんな人なのか。

優しい人?お金がある人?

・・・別にもうどうでもいいけれど。

きっと今母親は全力で、幸せを掴もうとしてるんだろう。

良かったですね。


・・・ドウゾ、オシアワセニ。




どこかで待っているその人のため、着飾った母親はとても美しかった。

哀しそうに微笑む顔はどこか私に似ていて。

“ごめんね。”“さようなら。”

形式だけの言葉を述べるところもそう。

残念だけど、この人と私には同じ血が流れているみたい。







.






こんな女にはなりたくないと、思った。








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なるせ*(プロフ) - 笹塚カナメさん» コメントありがとうございます!!共感していただけるのが作者としては一番嬉しいものです。感想ありがとうござました(*´▽`*) (2018年5月16日 4時) (レス) id: 7b25f3aafe (このIDを非表示/違反報告)
笹塚カナメ(プロフ) - 主人公の考え方、作者さんの表現力に感動いたしました。あっという間に読み終わってしまいました。これからも応援しております! (2018年5月16日 2時) (レス) id: 180a39eeb3 (このIDを非表示/違反報告)
なるせ*(プロフ) - うさたぬき。さん» コメントありがとうございます( ´∀`)ここから佳境ですので続きもぜひぜひご覧下さい(*´∀`*)ノ (2018年4月11日 22時) (レス) id: 91b64b0a9a (このIDを非表示/違反報告)
うさたぬき。 - 続きが気になります!更新頑張って下さい^^ (2018年4月11日 16時) (レス) id: e14d5f519c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なるせ* | 作成日時:2018年4月2日 19時

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