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「あ、荒北、さん?…それって、」
「っせーよ!早く帰ンぞオラ!」
「え、は、はい…!」
気が付いたら涙は止まってた。
好き、好き、荒北さん、ねぇ、気づいてます?
荒北さんが何でもない風に言った言葉で、私、こんなにドキドキしてるんですよ。
先に歩き出した、と言っても 私を気にしてゆっくり歩いていた荒北さんの背中を見て
そう思う。
あぁ、何度惚れ直せばいいのか。
早く来いヨ、と言う荒北さんの隣まで走り、帰る前の出来事を思い出す。
「そういえば、真波くんに言えない話ってなんですか?」
「ア゛?あー…、そういえばンなこと言ったナァ」
「そういえば、って」
「真波を撒くために適当に言ったことだ」
「なんですかそれ…」
「…Aチャンと、2人で帰ったことなかったって思ってヨォ」
「え?」
「東堂とか、新開とか、大勢で帰ったことはあっても 2人はなかっただろーが」
「そうですね…皆さん寮ですし、私もそうですし…」
「…一回ぐれー、一緒に帰ったって、バチあたんねーんじゃねーの、って思って、ヨ」
「へ…」
「…ア゛ー!んだこの会話!なんでもねーよ!バァカ!」
ふい、とそっぽを向いてしまう荒北さん。
私はそれ以上言えなくて、ただただ黙ってしまった。
辺りが暗くてよかった、だって、明るかったら顔が赤いのがバレちゃう。
「…荒北さん」
「…ンだよ」
「バカって言ったほうが、バカなんですよ」
「っセーよ!小学生みたいな返しすんナ!」
こんな冗談めいたことしか言えない自分に腹が立つ。
だって、こんな感じの態度取ってれば、好きってバレないでしょ?
バレたら もう一緒に帰れない。こんな風に声をかけてもらえないかもしれない。
私はこうやって逃げてきた。
情けないやつだ。
「どこまで行くつもりだー。女子寮着いてンぞー」
「え」
は、と隣を見るも荒北さんはいない。
後ろを振り向けば 女子寮の入り口で立ち止まる荒北さんの姿。
急いで戻り、荒北さんに頭を下げる。
「あの、一緒に帰ってくださってありがとうございました」
「礼言うことじゃねーだろ。俺が誘ったんだしヨ」
「それでも、私は荒北さんと2人でお話しできてうれしかったんです」
「っ、ウッセ!早く帰れバァカ!」
あー、またバカって言った。
くすくすと笑いながらそう言うと、荒北さんはバツが悪そうに自転車に飛び乗り行ってしまった。
雲一つない夜空の日の出来事だった。
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桃(プロフ) - さゆりん★さん» ご愛読と応援ありがとうございます!展開が気になる、と仰って頂けると、どう書こうかなぁ、と先を書くのが楽しみになります。荒北さん素敵ですよね、今度荒北さんの小説書こうかなぁ…。キャラの性格と言葉は気を使っているので着目して頂けたのが嬉しいです(^^♪ (2019年6月11日 21時) (レス) id: b8ab658ad3 (このIDを非表示/違反報告)
さゆりん★(プロフ) - めっちゃくちゃ面白いです!!いつの間にか次ボタン押していて、一気に読んでました… 展開がものすごく気になります!!真波くんは可愛いけど、私はちょい荒北押しかも… キャラの性格も言い方ぴったりすぎて、普通に声優さんの声が聞こえます (笑) 応援しています!! (2019年6月11日 13時) (レス) id: 269cb7a691 (このIDを非表示/違反報告)
桃(プロフ) - 陽愛さん» 初めまして、ご愛読と応援ありがとうございます(#^^#)評価ももちろん嬉しいですが、こうしてコメントを頂けることが何よりも嬉しいです!陽愛様のコメントが私の創作意欲を掻き立ててくださいます(*'▽')これからもよろしくお願いします! (2019年6月5日 8時) (レス) id: b8ab658ad3 (このIDを非表示/違反報告)
陽愛 - 初めまして!いつも楽しみに読んでいます(^^)高評価が何度も押せればいいのですが(>_<)これからも応援しています! (2019年6月4日 22時) (レス) id: 99136d3c89 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桃 | 作成日時:2019年5月12日 11時